共産党初の女性委員長「田村智子」の超インパクト

「創立101年を迎える我が党のトップに女性が立つのは、ある種の革命的なインパクト」(ある50年党員)

2023年8月号 DEEP

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志位委員長と田村政策委員長

「一強独裁」体制が変革の時を迎えようとしている。日本共産党のことだ。2000年に不破哲三氏から引き継ぎ、委員長に就任した志位和夫氏(68)は22年間、党首として「君臨」してきたが、近年は国政選挙で連敗。党員数や機関紙「しんぶん赤旗」の部数の減少にも歯止めがかからず、頼みの綱である立憲民主党との「野党共闘」も瓦解寸前。党内外から「委員長交代」の声が強まっているからだ。

「1月に『党首公選制』を主張した著書を出版したベテラン党員2人を相次いで除名したことで支持層が急速に離れ、4月の統一地方選で大敗しました。ツイッターなどでは、共産党員による志位氏らを批判する投稿が目立っています。『民主集中制』が組織原則である共産党で、公然と指導部批判が行われるのは異例の事態です」と元共産党員は厳しく分析する。

「一強」の終わりの布石となる異変が起きたのは6月23日。小池晃書記局長が、当選10回で与野党に幅広いパイプを持つ穀田恵二国対委員長の政界引退を突如発表。これだけでも驚きだが、参院議員の田村智子政策委員長(58)の衆院鞍替えを併せて公表したのだ。関係筋によると、共産党が現職の参院議員を衆院に鞍替えさせた例はなく、「異例も異例の人事」という。

田村氏を衆院東京ブロックに出馬させる狙いについて、小池氏は「ベストの国会議員団にしていこうという中で総合的に判断した」と述べるにとどめたが、水面下では来年の党大会に向け、志位氏の後任に田村氏を抜擢する方向で調整している。党本部関係者は「志位さんだけでなく不破さんも衆院議員だったし、公明党以外の主要政党の党首は全員衆院議員。田村さんを委員長にするための鞍替えなのは明らかです」と言う。

志位委員長の秘蔵っ子、田中悠機関誌活動局長(写真/宮嶋巌)

早稲田大学出身の田村氏は、大学在学中に学費値上げ反対運動に参加し入党。国会議員秘書などを経て、2010年参院選で初当選。近年は安倍晋三元首相による「桜を見る会」を巡る国会での追及が注目を集め、一躍「党の顔」になった。委員長になれば、共産党初の「女性委員長」「私大卒委員長」と異例ずくめ。「志位さんと異なり田村さんは両親が非党員の家庭で育ち、現実感覚を持ち合わせている」(党本部関係者)ため、党の刷新感を出すにはぴったりだ。

もう一つの注目点は書記局長人事だ。16年から小池氏が務めてきたが、志位氏と同時に退任するともっぱらだ。後継には小池氏と同じ参院議員の山添拓氏が有力。「弁護士出身で38歳の若さ。街頭演説の人気も抜群」(赤旗の記者)だ。このほか、世間的には無名だが、党本部で「将来の委員長候補」と目される田中悠氏(41)も国政に出る方向だ。「志位委員長の信頼が厚く、機関誌活動局長の要職にある。指導部の世代交代が一気に進むだろう」(党本部関係者)

一方、志位氏は、不破氏の後に空席となっている議長に就き、若手中心の指導部をベテランが脇を固める体制となる見通しだが、党内には「志位さんに心酔する田村さんは議長に逆らえないから、結局、『志位院政』になるのでは」と懸念する声も。

ある50年党員は「創立101年目を迎える共産党のトップに女性が立つのは、ある種の革命的なインパクトがある」と、目を細める。注目の党大会は、来年1月に静岡県熱海市で開かれる。

   

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