2022年12月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
政府が物価高克服・経済再生と称して2次補正予算を編成した。一般会計歳出は29兆円にのぼり、1次補正を含む歳出合計は139兆円と当初予算の1.3倍に膨らんだ。過去2年も新型コロナウイルス対策で巨額の補正を組み、決算ベースで歳出は140兆円台に乗っている。3年連続の大盤振る舞いだ。
電気代や食料品価格の高騰対策というお題目は良い。だが、この補正は必要額を積み上げたわけではない。自民党から求められて急きょ4兆円積み増した。野村證券の西川昌宏チーフ財政アナリストは「金額ありきをやめるべき。先に全体の額を決めるから毎年使い残しが発生する」という。実際、昨年度は6.3兆円の「不用」が生じた。これではいくらエコノミストが経済効果を予測しても当たらない。
野党を中心に消費税減税を求める声も聞かれるが、欧米各国と日本では置かれた状況が異なる。平時には財政をしっかり健全化する欧米に対し、日本は一貫して財政が悪化してきた。アベノミクスで経済が好調だった時でも、借金は膨らみ続けた。若い人は「このツケはいずれ自分たちに降りかかる」と思っているから財布のひもを緩めない。
構造改革は進まず、民間企業も地方自治体も、そして大手メディアすら政府の補助金や交付金にドップリ依存している。既得権を温存する仕組みにメスを入れないと、日本に未来はない。
物価上昇は世界各国で政権の支持率を下げ、体制の存続を危うくしている。日本もイギリスのように国債価格が急落(金利が急騰)すれば国民も気づくが、日銀のイールド・カーブ・コントロール(YCC)がそれを阻む。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「拡張財政がもたらす長期金利上昇圧力を日銀がYCCで抑え込めば、さらなる円安が進む」とみる。円売りという形で市場は警鐘を鳴らしている。
(ガルテナー)