バカ高い 「決済手数料」公開でクレカ業界は奈落の底

日本だけ異様に高い手数料の実態が明らかに。高還元のポイントプログラムも崩壊しかねない。

2022年12月号 BUSINESS

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クレジットカード決済の加盟店手数料の高さに嫌気が差している飲食店や小売店は少なくないだろう。それが11月末から、政府主導の下で手数料を引き下げる交渉がしやすくなるのだから加盟店には朗報だ。

実は、日本の加盟店手数料は海外と比べて極めて高い。経済産業省がモデル事例として示した飲食店や小売店など中小加盟店の手数料率は3.25%に上るのに対し、欧州では0.3~0.5%程度にとどまる。ここまで差が開いている最大の理由は、加盟店手数料に含まれる「インターチェンジフィー」の違いだ。

インターチェンジフィーとは、加盟店手数料を徴収するアクワイアラ(加盟店管理カード会社)から、使用されたクレジットカードを発行したイシュアー(カード発行会社)に対して支払われる手数料のこと。経産省が示したモデル事例では、加盟店手数料率3.25%のうちインターチェンジフィーが2.3%と、7割を占めている。片や欧州では規制によってインターチェンジフィーが0.3%以下に抑えられており、加盟店手数料も低い料率となる。諸外国と比べて日本のキャッシュレス決済比率が著しく低いのも、高い手数料ゆえにクレジットカード決済を導入したがらない店舗が多いためだ。

2025年にキャッシュレス決済比率40%を目標に掲げる政府も、インターチェンジフィーの高さに目を付けた。日本ではインターチェンジフィーの標準料率が非公開のため、なぜ加盟店手数料がこんなに高いのかブラックボックスになっていた。政府の「新しい資本主義実現会議」や公正取引委員会が執拗に標準料率の公開を迫ったことで、遂に11月末をメドに公開されることが決定。間もなく、異常なほど高い日本の料率が白日の下に晒される。

そもそも加盟店がインターチェンジフィーを負担すること自体、おかしな話なのである。インターチェンジフィーを受け取るイシュアーは、それを原資としてカード会員に「ポイント」を還元している。流通系カードはポイントを付与することで自社グループの経済圏が潤うエコシステムを形成し、銀行系カードも家電などに交換できるポイントサービスで利用を促している。だが、その原資を払っているのは還元が及ばない外部の加盟店。つまり、スーパーなどの小売店に営業利益率よりもはるかに高いインターチェンジフィーを負担させることで、ポイントプログラムを成り立たせているのがこの業界の実態だ。

政府や公取委は、インターチェンジフィーの標準料率が公開されることで「加盟店手数料率の引き下げにつながることが期待される」と公言する。加盟店から手数料を搾取している実態が明らかになることで、加盟店はクレジットカード会社に手数料の引き下げを要請しやすくなるからだ。実際、公取委の調査報告書によると、7割の加盟店が「(インターチェンジフィーの料率を)加盟店手数料の交渉材料の一つにする」と回答している。

一方、クレジットカード会社にとっては、最大の利用促進ツールである高還元のポイントプログラムが崩壊しかねない。クレジットカードのライバルであるQRコード決済などの「決済アプリ」が台頭するなか、ポイント還元率が引き下がれば、ますます利用者が決済アプリに流れてしまう。

さらには、ペイペイなどの決済アプリで給与を受け取ることができる「デジタル給与」の解禁(来年4月から実施)も、決済アプリの利用拡大につながるため、クレジットカードにとっては逆風だ。クレジットカード業界が奈落の底に落ちようとしている。

   

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