──「ものがたり」がある全国の生産者を厳選して、「おいしい」製品を共同開発。
2022年11月号 INFORMATION
日本酒「金のいぶき」
ファンケル(本社・横浜市)が、10月20日、品質にこだわった「おいしいもの」を、生産者のストーリーと一緒に届ける通販サービス「おいしいものがたり」をスタートさせる。今回は、日本酒・ビール・サングリア、おつまみなど全国から厳選した逸品を販売する。
ファンケルといえば、不満や不平といった世の中の「不」を解消するために、「正直品質・安全安心」の無添加化粧品・健康食品などを製造・販売してきた。そのファンケルが新たに手がけるサービスとはどのようなものだろうか。
担当の濱中澪主査
「『おいしいものがたり』は、品質にこだわった「おいしいもの」を、生産者のストーリーと一緒にお届けする新たな試みです」と、同社フードテック事業部の濱中澪(みおう)主査は話す。
「ファンケルのお客様は30代後半から40代の女性が中心です。その世代は、まさに弊社で活躍している女性社員の平均年齢と重なっていて、生活習慣や消費行動も似ていそうだと考えました。そこで、女性社員を対象に、アンケートを実施しました」
質問項目は、お酒に関する内容が中心で、「お酒を飲んでいますか」「どのようなお酒を買いますか」「どういう場所でお酒を買いますか」など。
「新型コロナウイルスの流行で、在宅勤務が増えたり、家族団欒の時間が増えて、自宅でお酒を楽しむ家飲みも多くなりました。その時、自分へのご褒美や癒やしのためなど、お酒がどのように飲まれているかを知りたかったのです」
アンケート結果は、「週1回以上、お酒を飲んでいます」が約50%もあった。
「質問項目には、『商品を選ぶポイント』も加えました。すると、『どのようなストーリーで商品が作られているか』『誰がどこで作っているか』など、商品の情報に共感したうえで、付加価値のある商品を購入するという回答が多くありました」
品質にこだわった「おいしいもの」を、生産者のストーリーと一緒に届けたい。そんな思いから今回の共同開発にこぎつけたというわけである。
そのひとつに、純米酒「金のいぶき」(寒梅酒造・宮城県大崎市)がある。銘柄で思い出された方もあるだろうが、ファンケルの「発芽米 金のいぶき」でおなじみの、宮城県で品種開発された玄米を使って醸造された日本酒である。
この品種は、〈通常の玄米の3倍もの大きさを誇る胚芽部分には、やビタミンEなどの栄養成分がたっぷりと含まれ〉(宮城県のHP)という高栄養の品種だが、米をわずかに削る独自精米技術で、玄米独特の甘みをていねいに引き出している。飲み口は中口(ちゅうくち)。柑橘系の香りがして、食前・食中酒として飲みやすい。
横浜ビールの「ラガー」(左)と「ヴァイツェン」
「Yokohama Kaoru Beer」(横浜ビール・横浜市)は、ていねいに手摘みしたホップを使用したクラフトビール2種類。ともに香りに特徴がある。「ラガー」(二次発酵製法)は、オレンジやトロピカルフルーツの香りがして、しっかりと苦みがありながら、バランスがいい。ビールは大麦麦芽で醸造するが、「ヴァイツェン」は小麦麦芽を50%使用し、酵母由来のバナナやバニラのような香りがする。香りと味の違いを飲み比べてもらうために、2種類がセット販売される。
サングリアのもと。右から「りんご」「もも」「みかん」
自家製サングリアのもと「HOME MADE FRUITY SANGRIA」(GNS・福島県二本松市)は、「りんご」と「もも」の2本セット。ほかに、単品で「みかん」もある。
サングリアとは、果物を加えた甘味ワイン飲料のこと。ドライフルーツが入った瓶に、赤や白のワインを加えると、数時間で自家製サングリアが完成。水や炭酸水を加えて、お好みの味に。みかんジュースなどを加えたノンアルコール飲料は、お子さんにも飲みやすい。
「ごぼうチップス」(上)と「おつまみあげマカロニ」3種類(下)
「GNSさんは、『持続可能な農業や食』を企業理念にされています。東日本大震災のあと、フルーツ王国の福島県は大被害を受け、果物の消費が伸び悩んでいました。そこでGNSさんは、ドライフルーツを使用した体験型商品を考案されました」
共同開発したサングリアは、通常品と比べてドライフルーツと香辛料・ハーブが2倍も使われている。芳醇な香りと風味を、甜菜糖(てんさいとう)のさわやかな甘みが引き立てる。
「今回のサービスを通じ、大震災で大きな被害を受けた生産者さんを応援してまいります。寒梅酒造さん(前述)も、震災で醸造タンクが倒れ、田んぼの酒米は津波で倒伏するほど壊滅的な被害を受けました」
このほか、野菜と穀物で作られたグルテンフリーの体にやさしいおつまみ「ごぼうチップス」「おつまみあげマカロニ(鳴門の焼き塩味・ゆず胡椒味・焦がし鶏しょうゆ味の3種)」も同時発売する。
お客様を喜ばせたい、生産者を応援したい――。そんな思いが詰まった「おいしいものがたり」が、ウィズ・コロナのライフスタイルをより充実させるきっかけになるかもしれない。
(取材・構成/編集委員 河崎貴一)