インタビュー/スタートアップ担当大臣 山際 大志郎氏(聞き手/編集長 宮嶋巌)

新しい資本主義の肝「スタートアップ創出」

2022年11月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

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1968年生まれ。東大大学院で博士号(獣医学)取得。動物病院の経営を経て2003年衆院初当選(神奈川18区・当選6回)。内閣府大臣政務官、経済産業副大臣など歴任。昨年10月より現職。

――岸田総理から、今年末に「5年10倍増」スタートアップ実行計画の策定を命じられました。

山際 総理が新しい資本主義の真ん中にスタートアップを置いたのは、新たな価値を創造し続けるイノベーションエコシステムを作ることが、日本が経済大国として存在感を発揮し、国民生活を豊かにする切り札とお考えだからです。

――総理はスタートアップ教育に定評のある米国大学の日本招致に取り組むとも発言しています。

山際 9月に米東海岸のスタートアップ拠点(ボストン、ケンブリッジ両市)を訪ね、MITやバブソン大の学長さんと関係強化を話し合いました。私は学生時代からシリコンバレーを「定点観測」してきました。訪れるたびに、そこには進化と発見がありました。一方、東海岸のエコシステムも負けていません。バイオ・ライフサイエンスのディープテックの集積は目を見張るものがありました。

――学生時代は起業家志望?

山際 いえ、当時から政治家になると心に決めていました。選挙に出るにはお金が必要ですから、大学院を出た後、仲間と動物病院を開業し、フランチャイズ方式で100店舗にする事業計画を立て、多店舗展開に取り組みました。2年間で7店舗にした時に自民党の公募に手を上げました。とにかく起業は面白かったなぁ……。

――スタートアップ大臣に相応しいアニマルスピリッツですね。

山際 最近は、日本でも「尖った人材」「エッジの立った人材」を発掘し、応援しようという機運が高まっています。スタートアップ育成5カ年計画では投資促進の税制優遇措置などに加え、優れたアイデアや技術を持つ若い人材への支援制度を拡大し、彼らがシリコンバレーやボストンのエコシステムを徹底的に活用するための環境整備を進めていきます。

――21年末の日本のユニコーン企業は6社。米国489社、中国170社に比べ極端に少ない。ご著書(*)には「遅れているからこそ大きいポテンシャル」とありますが、もはや手後れでは?

山際 それは違う。我々政治家は「しつこい生き物」です。その本質は「諦めないこと」であり、どんな難関にも希望を見出し、それを信じて前に進む。如何なる時代にも卓越したポテンシャルを持つ若者は必ずいるし、彼らの心に火を付けたら、必ず突破口が見つかる。私はそう信じています。日本は挑戦が足りず、世界に後れを取ったかもしれないが、諦める状況ではない。野心的な目標を持ち、失敗を恐れず、これでもかこれでもかと立ち向かえばいい。「失敗とは成功するまでやり続けないことだ」と、言うじゃありませんか。

――日本では事業会社によるスタートアップへの投資額も米・中と比べて極めて低い水準です。

山際 シリコンバレーを歩くと「日本企業は失敗を怖がり過ぎる」という声が耳に入ります。日本の組織では、多くの優秀なスタッフが「失点を減らす」目的で登用され、若い尖った人材は、その才能を削がれるリスクが高い。斬新なアイデアを提唱しても、周囲から「そんなことはいい。ふつうに仕事をしろ」と、平均点人材に誘導されてしまいます。岸田政権が「5年10倍増」という図抜けた目標を掲げたのは、こうした世の中の意識改革と行動変革を同時に促し、今年を「スタートアップ創出元年」とする決意の表れです。

――旧統一教会との少なからぬ接点が問題になっています。

山際 社会的問題のある団体と知らずに接点を持ったことを深く反省しています。今後は一切の関係を断ち、行動を持ってその約束を果たしてまいります。

(聞き手/本誌編集長 宮嶋巌)

★本インタビューは9月29日に、内閣府の大臣室において行われたものです。(編集部より)

   

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