連載コラム:「某月風紋」

2022年4月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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第5回大会で最優秀賞を受賞した福島高専「メヒカリ」の競技の様子

政府が来春、福島県沿岸部の浜通りに設置を予定している「国際教育研究拠点」の誘致合戦が、中核都市のいわき市を筆頭に激しくなっている。沖縄科学技術大学院大学(恩納村)のイメージが囁かれる。ここでは、約40カ国・地域から研究者が集まっている。研究機関には被災地の産業振興に期待がかかる。さらに、半世紀を要するとされる1Fの「廃炉」も大きな課題となる。

全国の高等工業専門学校(高専)生が廃炉作業で使われるロボットの技術を競う「廃炉創造ロボコン」がある。2021年1月にオンラインで開催された第5回大会で、14チームの中から最優秀賞の文部科学大臣賞を獲得したのは、いわき市の福島高専の「メヒカリ」だった。名称は「市の魚」からとった。

この大会の取材を続けているサイエンスジャーナリストの緑慎也によると、NHKなどが主催する「高専ロボコン」に比べても、課題の水準が高いという。

第5回は、原発の格納容器の底に溶け落ちた燃料デブリの回収を目指し、直径24㎝の細長い4mのパイプを通り抜け、デブリを模した物質を出発地点まで持ち帰るテーマに挑んだ。大震災後10年目の福島高専の快挙は、お膝元のいわき市を勇気づける。国際教育研究機関の誘致には、地元の高等教育機関との連携がポイントとなる。

浜通りには、世界の先端研究施設がすでにいくつか立ち上がっている。「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市・浪江町)では、日本のベンチャー2社が「空飛ぶクルマ」の開発競争に取り組む。世界最大級の水素製造工場である「福島水素エネルギー研究フィールド」(浪江町)では、トヨタグループがトラックの燃料に水素を使った物流実験を始める。

浜通りが「第4次産業革命」のトップランナーであることが、福島高専のハイレベルを醸成し、若者たちを奮い立たせる。

(河舟遊)

   

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