連載コラム:「某月風紋」

2021年4月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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地に落ちた総務省

総務省官僚に対する接待スキャンダルは、谷脇康彦・総務審議官がNTTの社長から接待を受けていた事実が明らかになるに至って、官房付に更迭された。東北新社をめぐる接待事件によって、他の6人とともに「減給」処分を受けた。

今回のスキャンダルについて、旧大蔵省の官僚が金融機関による接待を受けた汚職事件の連想から、接待の場所や金額に焦点が当たっている。それは、放送・通信界に君臨する総務省の存在の在り方から目をそらせるものだ。

総務省がおそれているのは、放送通信部門を監督する、米連邦通信委員会(FCC)のような独立委員会の創設による権限の分離である。駐留軍による制度改革によって生まれた電波監理委員会を旧郵政省が吸収したのを元に戻すものだ。

大蔵省は一連のスキャンダルによって、金融庁と証券取引等監視委員会(SEC)に分離された。総務省の矢継ぎ早の処分の背景には、総務官僚が権限の維持を図ろうという強い意思が透けて見える。

菅首相が主導する、携帯電話料金の引き下げに対して、NTTドコモは月額2千円台、データ通信量は20Gのプランで応えた。菅首相の公約を実現したように一見みえる。しかし、データ通信量が20Gでは動画サービスを十分に受けるには不足している。一方、メールの受送信とウェブ検索するには1Gあるいは3Gもあれば十分である。

「モバイル社会白書2020」によると、スマートフォン所有者は、自宅で9割がWi-Fiを利用している。通話もLINE経由が約6割も占める。

新プランによって、携帯電話各社の収益が落ちると報じられているが、どうか。格安プランからの誘導につながり、さらに、通信量が多いプランを勧めると予想される。官僚に対する接待のツケはどこに回るのか。火を見るより明らかだ。

(河舟遊)

   

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