公明党幹事長 石井 啓一氏に聞く

「ポストコロナ」を希望と安心の社会に!(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

2020年12月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

  • はてなブックマークに追加

1958年東京都生まれ。東大工学部卒、建設省入省。93年衆院初当選(通算9期、比例北関東ブロック)。財務副大臣、国土交通大臣(2015年~19年)を歴任。今年9月より現職。

――新型コロナウイルスの波状的な感染拡大が続いています。

石井 北海道で新規感染者が過去最多を更新しています。全国に先駆けて感染が増えているのは、寒くなって換気が疎かになり、「密」な場面が増えたからでしょう。北から南へ「第3波」が広がる恐れがあります。

――連立与党の幹事長として、衆院で代表質問に立ちました。

石井 目下の最大の課題は感染防止策と社会経済活動の両立を図っていくことです。「スペイン風邪」以来100年ぶりのパンデミックは、世界中が未経験・試行錯誤であり、その舵取りは非常に難しい。未曾有の国難、コロナ禍を収束させるには「政治の安定」が大前提となります。政治の安定は民主主義の土台であり、国民とのたゆまざる対話を通じて生活現場の声を政治に生かす努力があって初めて成り立ちます。公明党は政権運営が生活者目線から外れないよう、時にアクセル、時にブレーキの役割を果たしてきました。

――野党は、政権与党は「自助」「新自由主義」「自己責任論」と決めつけ、批判しています。

石井 菅総理が所信表明で「自助、共助、公助」を掲げたのは、三つのバランスこそが、国民国家の礎になるとの信念からでしょう。コロナ禍で困窮した人への支援やセーフティーネットの強化は大切ですが、財源を示さず、大減税や公共サービスの拡充を叫ぶのは責任政党ではない。「自助に偏した新自由主義」との批判は的外れです。

――衆院議員の任期が1年を切りました。年内の解散は?

石井 ほぼないと思いますが、来年1月の通常国会冒頭の解散はあり得る。常在戦場です。

――総選挙の最大の争点は?

石井 コロナ禍における政治の安定と、国民の間に漂う先行き不安と閉塞感を払拭する「希望と安心の社会ビジョン」を提示することが、政権与党の責務と考えています。これまで当たり前と思われてきた利益追求の価値観を転換し、人の命を守る医療や介護、環境保全などに軸足を置いた「生命尊厳の社会」を築かなければ――。今回のコロナ禍では、低所得者層だけではなく、非常に多くの世帯が困窮しています。中間層を含む全ての人を受益者とし、社会に「分断」をもたらさないようにする新たな安全網が必要なのです。

――具体策はありますか?

石井 いま注目されているのが、全世代型社会保障の考え方を推し進めた「ベーシック・サービス」論です。これは、医療や介護、育児、教育、住まいなど、人間が生きていく上で不可欠なサービスを無償化し、「弱者を助ける制度」から「弱者を生まない社会」へと福祉の裾野を大きく広げるものです。よく似た手法として、全ての個人に一定額の現金を継続的に給付するベーシック・インカムがありますが、給付の中身がサービスと現金では、決定的に異なります。

誰も置き去りにしない包摂社会を実現するには、従来の枠組みにとらわれず、思い切った発想で改革に取り組まなければ――。ポストコロナ時代の新たなセーフティーネットを構築するため、ベーシック・サービス論を本格的に検討する場を党内に設け、給付と負担の両面から議論を煮詰めたいと思います。

(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

  • はてなブックマークに追加