「風蕭蕭」

最前線の報告を積み上げよう

2020年10月号 連載 [編集後記]

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イオン湖北の杜若政彦総経理

「最も成功したと考えていることが一つございます。それは定休日を作ったことです。従業員がゆっくり休み、買い物をする時間をつくりました。これで従業員は心も身体も休まり、ご家族からイオンは本当に従業員を大切にしていると言われるようになりました」(杜若〈かきつばた〉政彦・イオン湖北総経理、9月8日、日本記者クラブのオンライン会見で)

1月23日未明、「本日午前10時以降、空港・駅・地下鉄・バス・高速道路・フェリーなどすべての交通を遮断する」とのニュースが流れ、中国の長江沿いにある1千万都市・武漢の都市封鎖(ロックダウン)は始まった。

ロックダウン下で、人々はどうやって生活していたのか||その道を選ばなかった日本では情報に乏しかったが、同地において食料供給という大事な役割を担った杜若氏の話で、2カ月半の間の様子がわかってきた。

杜若氏によると、ロックダウンが始まったとき従業員は、「当然明日からは休むだろう」と考えていた。だが、SNSを使って「従業員の安全と生活を第一に考える。我々は武漢の企業だ。お客様、武漢市民と一緒に困難な状況に立ち向かっていこう」というメッセージを流したところ、封鎖期間中、みんな勇敢に仕事をした。

ロックダウンは段階的に強化され、2月末には各住宅を封鎖管理する完全な態勢がとられた。すると、従業員は食料品をセット販売の形で各家庭に届けようとのアイデアを出した。総出で袋詰めに取り組み、市民への食料の供給体制を維持した。

最初は毎日営業していたが、定休日を取り入れたら、従業員の間に良い循環が生まれた。日本はこの先、うまく乗り切れるかはわからない。当事者たるエッセンシャル・ワーカーのこうした冷静な報告は、正しい判断の糧だ。

   

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