さまよえる天才の晩景

レオナルド・ダ・ヴィンチとルネサンスの黄昏

2020年10月号 LIFE [美の来歴]

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1515年の12月、フランス王フランソワ1世がミラノ公国を占領したとき、レオナルド・ダ・ヴィンチは王を遇するためにローマ教皇レオ10世がボローニャで催した和平の会見に余興を求められて、一興を案じた。市庁舎3階のフェルネーゼの間でフランソワを出迎えたのは、なんとレオナルドが作った精巧な自動人形の獅子であった。ばね仕掛けの鋼鉄製の獅子は大広間の貴顕の間を走り抜けると、王の前で立ち止まり、後ろ足で立ち上がって表敬した。やがて獅子の胸が開いて、そこからたくさんの白百合の花が振りまかれた。一同は喝采した。獅子はレオナルドの故郷、フィレンツェの紋章であり、白百合は占領国フランスの国花である。美術から建築、数学、天文学にいたるまで、あらゆる分野に迸るような叡知を開花させた天才児は、この時63歳。玩具の獅子に何を託したのだろう。フィレンツェが生んだ万能の鬼才は、若 ………

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