病める世相の心療内科㊺

「老後を考えない」高齢者の逞しさ

2020年10月号 LIFE [病める世相の心療内科㊺]

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クリニックに来る最高齢は97歳の女性である。シルバーカーなど頼らず、杖をついて一人でやってくる。むろん認知症ではなく、家族からのストレスで眠れないと訴える。亭主はパールハーバーにも行った軍人だったが、戦後、自転車屋をやり始めた。しかし商売は下手で、40年も前に借金を残して死に、女手一つで5人の子供を育て上げた。たくさんの孫もいるが、のんびり暮らすわけにもいかず、次女の家におかせてもらっているという。もらえる年金はわずかで一人暮らしはできない。長男には早く死なれ、長女とはそりが合わず交流はない。次男はギャンブル好きの怠け者で妻に逃げられ、とても母親を養う余裕はない。頼った次女は肺がんで寝込むことが多く、亭主はアル中で、酔っぱらうと「くそばばー、早く死ね」と平気で言うという。「もうすぐ100歳。立派ですね」と、漠然とした励ましをしてみるが「長く生き ………

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