「介護崩壊」こそ心配
2020年6月号 連載 [編集後記]
NPO法人暮らしネット・えんの小島美里代表理事
「デイサービスの休止が相次ぐとすぐさま、訪問介護で代替しろと軽くおっしゃる。ここまで訪問介護を厳しい状況に追い込んでおいて感染の疑いのある人のところへ、これだけ蔓延する状況の中、行きなさいとおっしゃるのかな。ずいぶん冷たいというか、自らの仕打ちをもっと省みていただきたい」
(小島美里・NPO法人暮らしネット・えん代表理事、4月24日、日本記者クラブの会見で)
新型コロナウイルスの感染拡大で、医療現場と同様、介護の現場も崩壊の危機にある。なかでも訪問サービスはいろいろなお宅を回る。自分たちがウイルスの運び役になってしまうのではないかと心配しながら仕事をするため、小島さんによると、過度なストレスで「コロナ鬱」になったヘルパーが出た事業所もあるという。
病院のように衛生設備があるところではなく、一般の住宅に行くので、防護服に替わるものをヘルパー各々が準備せねばならないが、介護報酬が低く抑えられる中、負担はバカにならないという。手指の消毒用のアルコールも病院のようには行き届かず、シャワーを浴びたくても、そんな設備のある事業者はほとんどないという。
現状もさることながら、小島さんはヘルパーに対する政府のこれまでの無理解に憤る。「主婦ならだれでもできる」との言われようで、専門性を認められず、介護保険制度が始まってから報酬は一貫して抑えられてきた。そのため、ヘルパーの仕事に就きたいという人は減り、有効求人倍率はなんと13倍。訪問介護の“華”と言われていたが、今では70歳代は当たり前、80歳代の人も現役で働かなければ人手が足りない状態という。
世の中の仕組みは弱いところから崩れ全体に及ぶ。どこを太らせ、どこをやせ細らせたか把握している厚生労働省は弱体化させてきた所にこそ手を打つべきだ。