元国家戦略担当相 古川 元久氏

アフター・コロナの世界を導く「BBB」

2020年6月号 POLITICS [プロフェットに聞く!]

  • はてなブックマークに追加
古川 元久氏

古川 元久氏(ふるかわ もとひさ)

元国家戦略担当相

1965年生まれ。東大法卒。大蔵省を経て1996年衆院初当選(愛知2区・当選8回)。官房副長官(菅内閣)、国家戦略担当相(野田内閣)、衆院内閣委員長などを歴任。国民民主党代表代行。

――「緊急事態宣言」の期限が5月31日まで延長されました。

古川 私が菅内閣の官房副長官時代に、今回のような事態を想定して事務方に立法を指示したのが新型インフル特措法でした。ところが、安倍政権は五輪延期を決めるまで手を拱(こまぬ)き、緊急事態発令が1カ月以上遅れた。ワクチンの接種まで2~3年かかる。秋以降、より深刻な第2波、第3波に襲われかねない。1年後に東京五輪ができると思う人が、どれだけいるでしょう。

――御党が提案した全国民一律10万円給付が実現しました。

古川 個人と企業の命にかかわる「大出血」を一刻も早く止めるのが、政治家の責務です。1度では足りない。2度、3度の給付が必要になるでしょう。

経済活動と感染症対策はトレードオフの関係にあり、世界各国のGDPの落ち込みを、未曽有の財政出動で支えることになる。

――それでうまくいきますか。

古川 1929年の世界恐慌に匹敵する動乱の始まりかもしれない。各国政府の財政支出により、世界経済は一時的に持ち直すかもしれないが、やがて実体経済の悪化が、金融不安を惹起しかねない。世界恐慌後の動乱の十数年は、第2次世界大戦によって終結しました。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があるが、果たして賢者になれるか問われている。

――日本はどうなりますか。

古川 我が国の最大の課題は「人口減少」と「地方衰退」だとわかっていたのに手を打たず、その結果、日本は重い糖尿病患者のようになってしまっています。すなわち東京は元気でも地方は壊死しかかっている。今、その東京がコロナ流行の中心になっています。コロナ禍はグローバリゼーションや都市一極集中の歪みと危うさを気づかせ、世界的な感染爆発は、我々人類に新しい価値観や社会像の構築を迫っているのだと思います。

――世界は変わりますか?

古川 感染者32万人、死者1万9千人を出したニューヨーク州のクオモ知事が「BBB」(Build Back Better=コロナ後の社会をよりよく!)というスローガンを唱え始めたそうです。「コロナ後は元の生活に戻るのではなく、環境にも人々にも優しい生活を実現しよう」というスローガンが、アフター・コロナの社会像をリードしそうです。

――日本はマスクもインバウンドも、過度の中国依存でした。

古川 グローバリゼーションを否定しませんが、食料やエネルギーなど必要最低限の生活物資は自給できる日本にしたい。それには「山水郷」に恵まれた地方が、「地産地消」で最低限の暮らしはできるようなローカルな循環を作ることが必要です。

――「9月入学」を仕掛ける?

古川 5月1日、我が党のワーキングチームは「9月入学の最大のメリットは公平な教育機会の確保だ」として、政府に迅速な検討を求める提言を出しました。その前提として全国でオンラインの学習環境を整えることが必要です。第2波が来ても授業を続けられる環境を整えた上で、世界標準の9月入学を実現することです。

これにより、コロナ後の社会を生きていく子どもたちの教育をよりよいものに大きく変える。「教育のBBB」です。

(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

  • はてなブックマークに追加