ローソンの「大麦」シリーズ コンビニ「健康志向パン」の最前線

ローソンが「美味しくて健康」を軸にベーカリーメニューを多様化。ロングセラーの「ブランパン」に続く糖質を抑えたパンを発売。

2020年2月号 INFORMATION

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健康志向のパンが並ぶローソンの店頭

スイーツやパン、惣菜などのオリジナル商品の開発に、コンビニエンスストア各社が力を入れている。スイーツでは、ローソンのチーズケーキ「バスチー」のように来店客数を押し上げる大ヒット商品も現れた。そんな中、同社が腰を据えて取り組んでいるのが、健康志向のベーカリー商品だ。

パンはコンビニが扱う食品の中で、購入率がもっとも高いものの一つ。オリジナル商品の数も多く、新しい商品が常に投入される分野だが、ローソンは8年前、糖質を低く抑えるためブラン(小麦の外皮、ふすま)を原材料に使用した「ブランパン」を開発。現在の「低糖質」ブームに先駆けて発売した。当初は伸び悩んだものの、現在では40~50代の女性を中心に、通常のパンの2倍近いリピート率を誇る人気定番商品に育っている。食パンから菓子パンまでメニューも豊富になり、ブランパンシリーズが定着したところで、昨年、新たなシリーズが投入された。ブランではなく、大麦を使って糖質を抑えたパンだ。

食物繊維豊富な大麦を使用

「大麦パン バター入りマーガリンサンド」

大麦シリーズの第1弾は、昨年5月発売の蒸しパン。続けて7月に食卓メニューの「バター入りマーガリンサンド」が発売された。いずれも販売数は好調で、11月に「あらびきソーセージパン」や「チョコクロワッサン」など3品を追加、現在は季節商品の蒸しパンを除く4品が店頭に並んでいる。

ブランは糖質が少ない一方で独特の風味があり、中には少し苦手という人もいる。だが大麦パンは食べてみるとふわっと口当たりよく、普通のパンと変わらない食感。表示を見なければ大麦パンとは気づかない、自然な美味しさだ。糖質は一個あたり4.7g(バター入りマーガリンサンド)~14.9g(あらびきソーセージパン)。食物繊維も同5g~10g弱と豊富に入っている。

「大麦のあらびきソーセージパン」

実は同じ糖質を抑えたパンでも、ブランパンに比べ、大麦パンは「ブランよりくせがなく食べやすい食卓パン」を目指して開発されたのだという。糖質を気にする人は大勢いるが、体調などでどうしても糖質を抑えたい人から「ちょっと気になる」という人までレベルはさまざま。そこで、「ふつうのパンの美味しさで、糖質も少なめ」という需要を狙った。商品を多様化することで、その日の体調などに合わせ商品を選択することも可能になる。

ベーカリー担当のマーチャンダイザー、村田文子さん

大麦パンの発売後の手応えを、「大ヒットというのではないが、ずっと同じ数だけ売れ続けるメニューに育ってきた」と話すのは、ローソンで大麦パンの開発を担当した村田文子さん。村田さんはマーチャンダイザーとして、現在ベーカリー商品の企画やマーケット調査、メニュー開発などを手掛けている。大麦パンはブランパンに続き、発売以来、1•5倍以上のリピート率となっているそうだ。

大麦パンの開発にあたっては、雑穀や米粉など小麦以外の材料を取り入れたパンが専門店などで増えていることも踏まえ、どんな食材を取り入れるか、というところから検討していったという。大麦は概ね小麦より芒(のぎ)という穂のヒゲの部分が長く、ビールや麦茶の原材料にもなっている。香ばしく、小麦より食物繊維が豊富で、ソーセージなどと相性が良い。一方で、小麦に多く含まれるグルテンはほとんど含まれていない。ふっくら、しっとりとしたパンならではの食感にはグルテンが大きく関係しているため、パンの美味しさをどのように出すかが重要となる。ブランパン開発での経験を踏まえ、他の材料との組み合わせ、配合を調整し、試作を数多く繰り返したそうだ。

ロングセラー「ブランパン」(左)と「大麦のチョコクロワッサン」

我慢している人に「選択肢」

村田さんはもともとパンメーカー出身。パンは得意分野なだけに、取引メーカーと共に新商品を開発する中で「こんなに口を出すマーチャンダイザーはあまりいない、と言われます」と笑う。糖質を抑えたパンについては「このパンがあるからパンが食べられるようになりました」との声も届き、意義を感じているという。「糖質を気にしている方には、逆にチョコレートやあんこを食べたいという声が多い。普段我慢している方のために、大麦パンでチョコクロワッサンも作りました。買わないだけでなく、こちらの選択肢もありますよ、という提案です」

ローソンの健康志向のパンは、今後も糖質や食物繊維だけでなく他の栄養素にも目配りした新商品が発売される予定だ。

1月に発売された「プロテイン入りチョコ蒸しケーキ」

その一つが、1月7日発売の蒸しパン「プロテイン入りチョコ蒸しケーキ」。1袋でタンパク質約10gが摂取できるという。蒸しパンはのどごしが良く、高齢者でも食べやすい人気メニュー。プロテイン入り飲料は以前から多くの商品が発売されているが、毎日食べるパンから栄養を補えるのならそれに越したことはない。世代を問わずさまざまな人がコンビニを利用するようになった今、健康志向の食品はコンビニでもますます重要なキーワードになりそうだ。

(取材・構成/編集委員 上野真理子)

   

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