19歳囲碁名人は丈和が好き
2019年12月号 連載 [編集後記]
芝野虎丸名人
「正直言うと、ずっとやめたかったんですよ。親も本を買ったりやってくれていたんで、なかなか言い出せず。1階と2階の本棚がぎっちり埋まっているので千冊ぐらいは。買った時は新しい本なのでほとんど読んでいると思います」
(芝野虎丸・名人、10月18日、日本記者クラブ)
10月に最年少の19歳11カ月で囲碁の名人位に昇りつめた。プロになったのは2014年9月。わずか5年1カ月で7大タイトル獲得を成し遂げた。
家族の誰もが囲碁のルールを知らなかった。ある日、お父さんが「ヒカルの碁」のゲームを買ってきて、まず兄がのめり込み、自分も続いた。
「正直そこまでプロになりたいという気持ちはなかった」
棋風はひたすら攻撃。よく研究するのが「本因坊丈和の棋譜」と聞くと、囲碁をよく知っている人はみんな、なるほど、そうなのか、やっぱり、とうなずく。
その場のあまりの納得感の醸成に、「普段の生活では、攻撃的でないので、そっちが本来の性格とは思われたくないですね」と、あわてて釘を刺す。
「虎丸は始まったらずーっと碁盤だけ見て、碁盤に全力を尽くすことが小さいときからできた」と話すのは師匠の洪清泉四段。
色紙に『全力』と書くが、実は「父の『そう書くといいんじゃないか』という意見に流された」。まったく気負いというものがない。
小学校低学年のときにテレビが故障し、以来、家にはテレビがない。AI時代の申し子らしく、対局中、相手すなわちヒトの動きはまったく気にならない。
「(AIには)ハンディなしだと100回打っても勝てない。2子ならたまには勝てる。4子置けばほぼ負けない」AIの進歩度は彼をメルクマールにするとすこぶる正確に測れるだろう。