初来日・習近平が「著作権侵害撲滅」に本腰

2019年6月号 POLITICS [特別寄稿]
by 今井雅人氏(衆議院議員)

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今井雅人氏

中国の習近平国家主席が6月の20カ国・地域首脳会議(G20)に合わせて初来日する。私は国会議員になってから、中国との経済外交に力を入れてきた。日中双方に拠点を置くビジネス関係者から紹介を受け、今年、中国で中国政府中枢と面談した。そこで強く感じたことは、中国は日本との関係改善に本気で取り組む考えであり、特に中国による著作権侵害の撲滅に本腰を入れようとしていることだ。中国側は「中日関係は非常に重要だ。昨年の安倍晋三首相の訪中もあり、中国国内では日本との関係改善と更なる強化を望むムードが高まっている。国家主席の訪日を関係のさらなる強化のきっかけにしたい」と強調する。「幅広い日中関係強化の思いは同じであり、日中は既に経済面で密接な間柄にある。ますます切っても切れない関係になると確信している」と、私は答えた。

目下の対米関係の硬直化という背景もあろうが、中国側の本気度を肌で感じた。そこで私は、かねて懸案の中国企業による著作権侵害問題を指摘した。「日本のキャラクターなどの模倣品が中国で広く流通しており、それが中国への日本側の根深い不信になっている。この問題を解決すれば中国に対するイメージは格段によくなり、日本企業も中国とのビジネスを安心して展開できるようになる」と。

実際、現在も日本企業が中国企業による著作権侵害を受けたとの報道が相次いでいる。中国政府中枢の回答は真摯だった。

「国家主席もこの問題に重大な関心を持っている。3月の第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議で発表された政府活動報告でも外国企業や外国籍の投資家の合法的な権利・利益の保護を強化すると打ち出した。それに伴い、外資系企業の投資に関わる基本法である『外商投資法』が全人代で成立し、2020年に施行する。強制的な技術移転の禁止を明記し、外国企業の技術や著作権の保護を確実にできるようにした」

中国側がどの程度、この問題に真剣に取り組むか注視する必要があるが、全人代で具体的な政策を打ち出したことや、中国政府関係者の熱のこもった口調から、過去にない熱意を感じた。

我が国にとって米国が最も重要な同盟国だが、今後、経済面で中国が米国に勝るとも劣らぬ存在になることは明らかだ。習氏が重点政策に掲げる環境汚染対策や、中国がこれから直面する高齢化問題について、日本は「課題解決」先進国として、様々な貢献ができる。日本企業のビジネス拡大に繋げるためにも、日本政府は国を挙げて中国との人的交流や、中国語人材の育成に積極的に取り組むべきだ。

世界経済における中国のプレゼンスは、やがて米国と肩を並べるだろう。習氏が推し進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に対して、日本側の警戒は根強いが、島国の日本が中東から欧州への陸路を通じた経済圏を独自に開拓することはできない。新経済圏の恩恵に浴するためにも、日本は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の気概を示し、一帯一路への参加を検討すべきではないか。

習氏の初来日に伴う日中首脳会談では、新時代を拓く幅広い議論が期待される。

著者プロフィール

今井雅人氏

衆議院議員

岐阜4区、当選4回

   

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