2019年6月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
世界初の全自動衣類折り畳み機「ランドロイド」を開発したseven dreamers laboratories(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ)は4月23日、東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。昨年末、日経新聞が発表した「NEXTユニコーン推計企業価値ランキング」で26位(185億円)にランクインしたばかり。日本発ユニコーンの有望株と期待されたセブン社の破綻劇は、スタートアップ業界に大きな衝撃を与えた。
「NEXTユニコーンの顔ぶれを仔細に眺めると玉石混淆。中にはネガティブな情報が飛び交う企業もある」(大手商社審査部)。その1社が、人工知能とビッグデータを活用した電力需給管理システム「パネイルクラウド」を展開するパネイル(東京都千代田区)だ。
世間からの期待は申し分ない。前述のランキングでは、パネイルが堂々の2位を獲得。『Forbes JAPAN』(2019年1月号)発表の「日本の起業家ランキング2019」では、代表の名越達彦氏が6位に選出され、ユニークな経歴も相俟って俄かに脚光を浴びた。
名越代表は東工大時代に「鳥人間コンテスト」に出場し、見事優勝。卒業後はディー・エヌ・エー、エイチームを経て12年12月、パネイル設立に至った。当初、太陽光発電関連の事業を手がけていたが数年前に撤退。パネイルクラウドの開発・運用に集中した結果、短期間で急成長を遂げ、18年9月期には年収入高300億円の大台に乗せた。
一見、順風満帆に見えるが、水面下では年明け以降、業績悪化の噂が絶えない。「直近の決算で営業段階から多額の赤字を計上したことで財務内容が悪化。急きょ代表筋が増資を引き受け、何とか債務超過を回避したらしい」(取引先)。一部エリアからの撤退観測も流れるなど、ここにきて収益悪化に直面しているのは間違いなさそうだ。従前から業界内では「大風呂敷を広げがちな名越代表に首を傾げる向きも少なくない」(同)といわれ、別の銀行関係者は「電力関連のスタートアップ企業の中で良くも悪くも動向を注視している銘柄のひとつ」(地銀融資部)という。数年後、セブン・ドリーマーズの二の舞いにならなければいいが。