「風蕭蕭」

事故原因調査を再開せよ

2019年4月号 連載 [編集後記]

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福島第一原発1~4号機 2011年3月15日撮影

出典:東京電力ホールディングス

「炉心内の水の自然循環がなくなったことは核燃料の崩壊熱除去機能が喪失したことを意味します。燃料棒は蒸気膜で覆われ、熱が奪われず、破損します。この状態をドライアウトと言っています。その可能性が非常に高いと思います」

(木村俊雄・元東京電力技術者、3月6日、東京地裁818号法廷)

定説はそうであると広く認められている説であって、必ずしも事実であるとは限らない。あまたある考え方の一つに過ぎない。

レベル7の過酷事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所は、2011年3月11日14時46分の大地震の揺れには耐えたが、その約41分後からやってきた数度の津波にやられメルトダウンに至った、というのが定説になりつつある。

東電のたたき上げ原発技術者だった木村さんは、この説に真っ向から異議を唱えている一人だ。事故後、東電がいつまでたっても原子炉内の水の流量データを出さないでいることに気づくとまず、過渡現象記録装置の記録を開示させた。そして、膨大なデータから、1号機の炉心では本震発生直後に再循環ポンプによる強制的な水の循環だけでなく対流による水の自然循環も止まっていたことを見抜き、同日17時過ぎに放射能漏れが確認されたことと考え合わせ、遅くとも津波襲来時点には核燃料の破損が始まっていたと唱えてきた。

木村さんは科学誌への発表やインタビューに答える形が多かったが、今回は法廷で事細かに証言。東電側のこれまでの反論に、理路整然と再反論もしてみせた。

地震でメルトダウンしたのであれば、再稼働した原発を吟味し直さなければならなくなる。原発を再稼働するのかそれともやめてしまうのか、国家の一大事は、定説をもってではなく事実をもって決められなければならない。安倍政権下で止んでしまった事故検証の再開が必要だ。

   

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