2019年4月号 連載
ヘンリー・ルイス・メンケン(1880-1956)
米国のジャーナリズム史を語る上で外せない人物に、ヘンリー・ルイス・メンケンがいる。高卒後、地元ボルチモアでアルバイトから記者として叩き上げ、やがて大統領を向こうに回し論陣を張る存在に。氏の功績は、会田弘継氏の『追跡・アメリカの思想家たち』に詳しい。「ボルチモアの悪ガキ」と称された暴れっぷりは、「上り坂の政治家の美点を探す。それはしらみになりたいやつらの仕事だ」との言や面構えを見れば瞭然だ。
こう思う。今の日本に彼を容れる、いや彼に選ばれるメディアはあるのか。最右翼はファクタであろう。「権力」はもちろんのこと、媒体は一番嫌がるが記者には不可避の「訴訟リスク」を恐れないからだ。
メンケンは記者本採用の当日、編集長から「警察官の言うことを絶対に信用するな。必ず自分で確かめろ」と言われ、終生の信条とした。この逸話が示す通り、いい記者を生み育てるのは、いい記者が集まる「箱」だ。
ファクタは読者に良質でダイナマイトな記事を届ける以外に、気概ある記者を育て守る使命も負っている。
ジャーナリスト 中山寧