統計不正にGDP嵩上げ 総理が霞が関を変えた!
2019年4月号
POLITICS [キーマンに聞く!]
1971年香川県生まれ。東大法学部卒。自治・総務官僚を経て、05年衆院初当選(当選5回)。09年鳩山・菅両内閣で総務大臣政務官。昨年9月無所属から立憲民主党会派に入り、現在同党幹事長特別補佐を務める。
――衆院予算委員会で8回質疑に立ち、統計不正とGDP嵩上げ疑惑を厳しく追及しました。
小川 安倍首相が唐突に(15年9月)GDP600兆円の目標をぶち上げ、その計算方法を変更した途端に名目GDPが32兆円近く跳ね上がった。「これは怪しい」と、ずっと思っていました。何せ財務官僚に決裁文書を書き換えさせ、悪事が明るみに出ても財務大臣の続投を許す政権ですから。毎勤統計の不正は入り口に過ぎないと思いました。官僚組織を挙げてのGDPの嵩上げこそ、本丸ではないか。
――毎勤統計の調査手法の変更に際し、当時の中江元哉首相秘書官(現在は関税局長)とのやり取りを示す、厚労省担当者のメールが出てきました。
小川 不都合なメールを公表した厚労省は、隠ぺい体質の財務省より、正常な対応だった。モリ・カケの時も首相秘書官の介在が取り沙汰されたが、そもそも彼らには職務権限がない。総理の威を借り、政策決定プロセスに横槍を入れるが、説明責任を負わない。異常な経過を辿って調査方法が変更されたのに、「意見を言っただけ。厚労省の判断」と結果責任を押し付け、逃げ回る。国家の意思決定プロセスが不透明になっています。一方、質疑に先立ち、若手官僚から何度もヒアリングをしたが、彼らのマインドが政権の体質と重なって見えることに愕然とした。
――マインドが「安倍化」?
小川 「質問に答えられない場合は理由を説明して」と言っても返事がない。我々は国民の代表として総理に聞くのだから、公僕たる皆さんはできる限り協力すべきだと言っても、当たり前のことさえ答えない。7年に及ぶ安倍首相の、まともに質問に答えない国会軽視の態度が閣僚に乗り移り、次第に局長、課長に感染し、遂に課長補佐クラスまで染まってしまった。
――霞が関が「安倍化」した?
小川 行政の長である総理大臣の資質が官僚組織の体質を変えてしまったのです。安倍さんの責任意識の希薄さ、倫理観の欠如が伝染し、霞が関の不正、非行を罷り通らせているのだと思います。
昨年、20歳のアメフト選手が記者会見に引っ張り出されたのに、最高責任者の理事長は姿を見せず、説明責任を果たさず、世の批判を押し切った。私の目には安倍政権と相似形に見えました。もしかしたら、日本社会の各界各層隅々まで、こうした体質が蔓延しているのかもしれません。
――「野党の統計追及は不発」と報じたマスコミもあります。
小川 初っ端(2月4日)の質疑で、統計数字への政治介入疑惑に切り込むや、事務所への電話は鳴り止まず、メールやSNSによる激励が殺到。「感動した。よくぞ言ってくれた」「本気で戦っている議員を見た」と、予想だにしない反響があった。4回目(2月18日)の質疑で、総理が喧伝する国民総所得拡大の矛盾を突いた時は「あなたの質疑に希望を感じた」という声も。
安倍総理の価値観や感性にシンクロできない国民は決して諦めていない。彼らの琴線に触れるタマを投げれば、必ず大きな反応が返って来る。私と同じことを感じている国民がたくさんいる――。戦う希望をもらったのは、私たち野党の方です。
(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)