立憲民主は亀石、加藤ら「女性候補」が突破口

2019年1月号 POLITICS

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2019年は4年ごとに行う統一地方選と、3年に一度の参院選が重なる12年ぶりの「亥年(いどし)選挙」の年である。安倍晋三首相の脳裏には、日ロの平和条約締結をテコにした衆参ダブル選挙の選択肢も浮かんでいよう。来年は近年まれにみる「選挙イヤー」になる。そんな中で野党第1党の立憲民主党はどんな戦術で臨むのか。その一端が垣間見えるシーンが11月28日に憲政記念館であった。

辻元氏が口説き落した亀石倫子氏(撮影/本誌 宮嶋巌)

「この人、議員になってほしいよね。どうです皆さん?」。立憲の辻元清美国会対策委員長が、自らのパーティーにゲストとして呼んだのは弁護士の亀石倫子(みちこ)氏(44)。19年参院選の大阪選挙区(改選定数4)から出馬する。「1回会いたいとアポ取って食事に行った」「亀石さんの実家の小樽にまで押しかけて両親とも話をした」――。辻元氏は亀石氏を口説き落とした経緯を満足げに披露した。

栃木選挙区(同1)では、荒井聡元国家戦略相の政策秘書を務めた加藤千穂氏(43)が出馬する。12月2日に宇都宮市で開いたパーティーには福山哲郎幹事長が訪れ「何としても支援いただきたい」とあいさつした。栃木は枝野幸男代表の出身地。重点区の一つとなりそうだ。

枝野代表の出身地、栃木県から出馬する加藤千穂氏

愛知選挙区(同4)では、国連世界食糧計画(WFP)職員の田島麻衣子氏(41)を擁立する方向だ。菅義偉官房長官とのガチンコ質疑で知られる東京新聞の望月衣塑子記者の擁立論も囁かれる。自民1強への対抗策は「女性」というわけだ。

世界的な潮流はある。18年11月の米中間選挙。下院で8年ぶりに過半数を奪還した野党・民主党躍進の原動力は女性だった。性被害に声をあげる「#MeToo」運動やトランプ大統領の女性差別的な態度に対する批判が広がった。230人を超える女性が下院選に出馬した。その多くが初挑戦だった。

立憲は9月の党大会で比例代表候補の4割を女性とする目標を打ち出した。自民党は19年夏参院選で42の選挙区候補の公認を決めているが、女性は4人しかいない。先の臨時国会での改正出入国管理法の審議に見られるように、数を背景にした強権的な姿勢は、主婦層を中心に反発が強い。女性の力を集めれば、超長期政権に風穴を開けられると読む。

問題はこのストーリーをきちんと形にできるかだ。勝敗の帰趨を占う32の1人区で、候補を擁立できているのは12月10日時点で、栃木選挙区の加藤氏だけ。立憲幹部は「来年5月までに候補者擁立ができれば十分選挙になる」と話すが、都道府県を選挙区単位とする参院選では知名度の浸透に時間がかかる。

資金面での不安もある。参院選で必要とされる選挙資金の相場は1人5千万円とされる。潤沢な資金力を持つ候補は少ない。頼みは党本部からの資金補給だが、出来たての政党では心もとない。支持率が1%に届かぬ国民民主党が瓦解しないのは、前身の民進党から移った50億円以上の資金が残っているためだ。

「選挙は土俵をつくった者が勝つ」が、立憲の枝野代表の持論だ。17年衆院選では「立憲民主党はあなたが創った政党だ」と呼びかけ、小池百合子東京都知事が率いた希望の党に代わる反自民票の受け皿となった。エッジの利いた女性軍団が台風の目となるか。ムーブメントの高まりは選挙結果と連動する。

   

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