ローソンのスマホ戦略 コンビニアプリ進化の最前線

もはや情報発信に留まらない。セルフレジ的機能も備えた最先端のローソンアプリには、顧客を取り込む仕掛けが満載だ。

2019年1月号 INFORMATION

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ローソンアプリのホーム画面

コンビニエンスストア各社が、スマートフォンを使ったサービスに力を入れている。大手3社はそれぞれ専用の公式アプリを配信。スマホ自体の進化に合わせ、ポイントの連携やクーポン獲得など、ここへ来て機能の充実ぶりが目立ってきている。

スマホアプリで先鞭をつけたのはローソン。2014年から展開を始めた。当初はキャンペーン情報などを発信するツールの位置づけだったが、数回のリニューアルを経て、現在は「通常の店舗で使えるアプリ」へと変化している。18年6月には、後を追うセブン-イレブンも新アプリの配信を開始。スマホアプリは活用の仕方次第で店舗業務効率化などの課題解決に向け一役買う側面もあり、今や新たなデジタル戦略を競う主戦場となった印象だ。

機能でも先頭を走るローソンのアプリは、18年11月末時点でダウンロード数480万。月に一度は必ずアプリを開く月間アクティブユーザーは140万人を数える。トップ画面には連携したPontaポイントかdポイントのポイント数が表示され、店舗検索で近くの店を探すのも簡単だ。

レジに並ばず支払い完了

お試し引換券の画面。すでに売り切れで「受付終了」の表示が出ているものも

アプリの便利さを実感するのは、まずポイントを利用した実質的な割引サービスだろう。アプリで入手できる「お試し引換券」は、手持ちのポイントに応じ、画面上で商品引換券を発行、店舗のレジで商品と交換する仕組み。たとえば130円の商品が40ポイントで入手できるなど割安感があるためアプリ利用者の間で人気が高く、事前に決まっている数千~数万の配布数が、期間終了前に配布完了してしまうこともしばしばだ。利用者の間には「ローソンに行く際にアプリをチェックしないと損」という感覚が生まれつつあるようだ。

ローソンが18年4月から実証実験を開始し、11月末の時点で首都圏12店舗で使えるようになった先進的な機能が「ローソンスマホペイ」だ。名前からスマホによるキャッシュレス決済機能と思いがちだが、単なるスマホ決済とは少し異なる。通常のスマホ決済は、商品を持ってレジに行き、店員が商品のバーコードを読み取って、スマホで支払うという仕組み。ローソンスマホペイの場合は、まず商品を手に取りバーコードをアプリで読み取る。購入ボタンを押すと、あらかじめアプリに登録したクレジットカードやApple Payなどの決済方法で支払いが完了。1分ほどで簡単に買い物が終わる。

ローソンスマホペイを導入した店舗内。タブレットでバーチャル店員が決済の案内をしてくれる

つまり、この仕組みはスマホを使ったセルフレジ。自分のスマホで商品情報を読み取り、レジを通さず決済を終えることができる機能なのだ。都心のコンビニでは、朝や昼時に、レジに長い行列ができていることが多い。こうした混雑店舗を対象に、2月末までには100店舗で使えるようになる予定という。

スマホペイは上海のローソンで先に同様の仕組みが始まった。現地で視察した竹増貞信社長の即断により、開発期間わずか3カ月というスピードで日本でもサービスをスタート。普及はこれからだが、すでに導入した店ではヘビーユーザーが増えているという。「特に20~30代男性のサラリーマン層で、行列に時間をとられたくないからと毎日使う方が多い。一旦慣れると、レジに並ぶのが嫌になってしまうみたいですね」と話すのは、導入に携わったマーケティング本部の白井明子シニアマネジャー。「アプリのダウンロード促進にもつながるのでは」と手応えを感じている。導入希望の店舗も、すでに数百店ほどという。

スタンプラリー機能でアイテムゲット

12月11日からスタートした「ドラゴンボール超 ブロリー」のスタンプラリー

今後、話題を呼びそうなのは「スタンプラリー」機能だ。この機能を使い、12月11日から1月31日まで行われているのは「ドラゴンボール超 ブロリー スマホスタンプラリー」。期間中に店舗を訪れ、「スタンプをためる」ボタンを押すと、1日1個のスタンプがもらえる。その数に応じて、ドラゴンボールのゲームのアイテムを獲得できる。人気コンテンツと連動し、ゲーム感覚で店舗に誘導する仕掛けは、新たな強力集客ツールとなるかもしれない。

「全国に1万5千店というインフラ数はスマホと相性がいい。アプリならお店側も紙に押すスタンプのためのスペースや設備がいらない。将来はこの仕組みを使い、全店制覇でプレゼントなどのキャンペーンもやりたいなと思っています」(白井氏)

他方、ローソンは18年3月、新たに「ローソンフレッシュピック(ロピック)」というサービスを開始した。朝、専用のロピックアプリから生鮮食品を注文するとその日の夕方までに近所の店舗まで配送され、店で受け取れる。生鮮食品を自宅まで配送する旧サービス「ローソンフレッシュ」(同8月に停止)と異なり、アプリの手軽さと「ご都合に合わせてお店に来ていただけるメリットがある」(広報室の李明氏)。今のところ首都圏約1600店舗で展開中で、30~50代の女性の利用率が高いという。

ローソンフレッシュピックのアプリ画面。材料がセットになったミールキットが人気

今やライフスタイルの違いにかかわらず多くの人の生活に欠かせなくなったスマホ。スマホを介したコンビニの顧客囲い込み競争はまだ始まったばかりだが、今後の業界地図にも変化をもたらしそうだ。

(取材・構成/編集委員 上野真理子)

   

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