公明党代表 山口 那津男氏

日中新時代の扉を開く大阪「G20」習近平初来日

2019年1月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

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山口 那津男 氏

山口 那津男 氏(Natsuo Yamaguchi)

公明党代表

1952年茨城県生まれ。東大法卒。弁護士。90年衆院議員初当選(当選2回)。2001年より参院議員(現在3期)。防衛政務次官、参院行政監視委員長、党政調会長などを経て、09年9月より現職(現6選)。ライフワークは地雷除去支援。座右の銘は母校・水戸一高の校是「至誠一貫」。

――安倍首相が10月25日に日本の総理として7年ぶりに中国を公式訪問し、習近平国家主席との会談が実現しました。

山口 「ようやく辿り着いた」と感無量でした。2012年に野田政権が、中国も領有権を主張する尖閣諸島の国有化に踏み切ると、中国が猛反発。中国の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射するなど、偶発的な衝突をきっかけに戦争になりかねない危機に直面しました。その最中に政権を奪還した安倍さんと私は、何としても最悪の事態を回避しなければならなかった。翌13年1月、総理から「親書」を預かった私は北京に飛び立ちました。友好路線を維持して来た公明党の代表だから受け入れてくれたものの、中国側はピリピリしていた。「本当に親書があるのですか。何が書いてあるのですか」と疑いの目を向けます。「このまま帰ることになるのか」と、落胆して迎えた帰国の朝、「今日、お会いします」と連絡が入り、習総書記(当時)に直接親書を手渡すことができました。しかも、多くの報道陣の前で。何とか大役を果たせ、心の底からホッとしました。あれから6年の歳月が過ぎ、今回の安倍・習会談で偶発的な軍事衝突を回避する「海空連絡メカニズム」のホットライン(専用電話)の設置交渉の年内実施が決まりました。これは、13年の訪中時に私が習さんに早期運用をお願いし、公明党が日中両国政府に粘り強く働きかけ、遂に実現したものです。

6度の会談、「親書」4通届ける

――このところ習氏と会談を重ねる安倍総理(9回)に次ぐ会談頻度ですね。

山口 私が習さんに初めてお会いしたのは07年(北京)。彼が中国共産党の常務委員に就任した時でした。2度目は09年(東京)、3度目は10年(北京)。件の13年の訪中は4度目でした。15年と17年にもお会いし、都合6回になります。

――初対面はどんな印象でしたか。

習主席と5度目の会談に臨む山口代表(2015年の中国訪問)

山口 年齢は私が一つ上ですが、非常に風格のある、しかし柔和な表情を持ち、人間的にいろいろと苦労されて今日がある方だと直感しました。人となりに触れたと思ったのは、10年の出会い。奥様の彭麗媛さん(国民的歌手)の日本における公演の写真を差し上げると、「うちに持ち帰り妻に話す」と相好を崩し、その表情がとても印象的でした。家族を大切にする、人間らしさを垣間見たように思いました。温かい心遣いを感じたのは、13年1月訪中の折、「池田大作先生から年賀状をいただきました。くれぐれも宜しくお伝えください」と、マスコミの前で発言されたことです。公明党の創立者である創価学会の池田名誉会長が日中国交正常化の推進を唱え、「友好の井戸」を掘った先人であることを「忘れていませんよ」というメッセージでした。

――しかし7年の道のりは険しかった。

山口 10年に世界第2の経済大国になった中国は「強国路線」を強め、南シナ海の軍事拠点化を進め、尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入が常態化しました。一方、安倍総理は13年末に靖国神社を参拝し、日中関係は再び窮地に陥りました。それでも15年と17年の訪中時に習主席に総理の親書を手渡すとともに「是非、日本にお越しください」という、こちらの思いを伝えることができました。この間公明党は、累次の訪中や日中与党交流協議会の再開など、日中関係の改善に力を尽くしてきました。今年9月に4通目の親書を習主席に届け、7年ぶりの安倍総理の訪中に繋げることができました。

――19年6月大阪で開かれるG20で日本は初めて議長国を務める。「慎重に検討する」と応じた習主席が来日しますか。

山口「本格的な準備を始めた」ということですから、日本が邪魔をしなければ必ず来ます。中国が対日姿勢をやわらげた背景には米中間の対立がある。仮に米国との緊張が高まったとしてもキャンセルするリスクの方が大きいから、必ず来日するでしょう。米中貿易摩擦を乗り越えるためにも、日中が「近くて遠い国」ではなく、確かな信頼関係を保つ必要があります。40年前に日中平和友好条約が結ばれた後も、日中関係は紆余曲折があった。これからも平坦な道ではないでしょう。しかし、だからこそ友好の基盤づくりを怠りなく進めなければならない。その意味でも習主席の初来日を実現し、毎年の「首脳往来」を定着させるべきです。今回決まった5年間で3万人に上る青少年相互交流も成功させたいですね。

負けられぬ「2大政治決戦」

――19年10月消費税率が10%に引き上げられます。再々延期はありませんか。

山口 ありません。消費増税の目的は、少子高齢化に伴って増大する社会保障費の安定財源の確保であり、さらに、幼児教育をはじめ教育費負担の軽減にも充てられます。税率引き上げと併せ、酒類や外食を除く食料品全般と定期購読の新聞の税率を8%に据え置く軽減税率も導入します。これは生活者の声を受け、政党の中で唯一、公明党が主張してきたもの。海外でも多くの国で導入され、事実上の「世界標準」の制度になっています。このほか増税の痛みを和らげる買い物時のポイント還元やプレミアム商品券も検討しています。あらゆる施策を総動員してソフトランディングを図ります。

――19年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の亥年の選挙の年です。

山口 4月の統一地方選では道府県、政令市議選では8割以上、東京特別区や一般市、町村議員選では約半数が改選されます。党のネットワークの要である地方議員の全員当選を目指します。7月の参院選では埼玉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7選挙区の全員当選と、比例区6人を合わせた大勝利を目指します。グローバル化の進展や人口減少・少子高齢化などに伴う課題が複雑に絡み合う中、多くの国民が納得する「最適解」を導き出す努力が、これまで以上に求められています。現政権が国民の信頼を損ね、不安が増す場合にはストップを掛けます。政権を奪還した時、肝に銘じたことは「政治の安定」がなければ内政も外交も前に進まないということでした。亥年の「2大政治決戦」は負けられない。

(聞き手 本誌発行人 宮嶋巌)

   

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