杉浦隆幸 日本ハッカー協会 代表理事

ハッカー支援で安全な情報社会を

2019年1月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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杉浦隆幸氏

杉浦隆幸氏(すぎうら たかゆき)

日本ハッカー協会 代表理事

1975年愛知県生まれ、43歳。2000年ネットエージェントを設立し東京理科大学を中退。04年Winnyの停止ソフトを世界に先駆けて作りホワイトハッカーの第一人者に。18年日本ハッカー協会を設立。

――協会の目的は何ですか。

杉浦 ここ数年、日本の企業でも情報セキュリティーを担うホワイトハッカーがもてはやされるようになりましたが、その割にはあまり活躍していません。ハッカーとして採用されたのにジョブローテーションで別の仕事をする羽目になりモチベーションを下げたり、法的なトラブルに巻き込まれたりする事例が増えています。法律の曖昧な部分の研究をしていて、ある日突然検挙されたといった事例が相次いでいるのです。この辺りを解決し支援することが必要だと思いました。

――具体的にどのようにサポートするのですか。

杉浦 職業紹介事業の認可を取りました。職を求めるハッカーの方にはスキルと連絡先を登録していただきます。登録は無料です。ハッカーを採用したい企業の方には紹介手数料が半額になる賛助会員になっていただくよう勧めています。それで条件に合うスキルを持つハッカーを企業に紹介します。登録会員には、法的トラブルに巻き込まれた場合、ITに強い弁護士を紹介し、弁護士費用の一部を助成します。企業には受け入れ態勢のアドバイスもします。長時間労働はやめてください、履歴書を手書きで書かせたり過剰にコミュニケーション能力を求めたりすることは避けてください、技術者を採用しようと思っているのに面接をする方が技術を分かっていないというのはやめてください、と助言しています。

――ハッカー支援の理由は。

杉浦 ハッカーが活躍できれば日本の情報セキュリティーの安全度が高まります。ですから、その可能性を潰すような法的行為には、対抗支援するのです。ファイル交換ソフトWinnyの製作者が著作権法違反幇助の罪で起訴されたことで、日本のP2P技術は芽が摘まれ、土壌が失われました。その後、P2Pを使って、ヨーロッパでスカイプが生まれ、どこかは不明ですがビットコインが生まれたことを考えると、損失はとても大きかったと思います。最高裁で無罪となりましたが、Winnyでウイルスをばらまいた奴を捕まえないで、それが誰かも知らない製作者を幇助罪で捕まえるのは無理くりです。

――メディア事業も考えていたと伺いました。

杉浦 サイバーセキュリティーメディア『ZERO/ONE』の編集長をやっていた岡本顕一郎さんが担当する予定でした。ハッカーや情報セキュリティーに関する啓蒙活動ができるので、今始めた事業とで車の両輪にするつもりでした。しかし、岡本さんが18年6月24日に福岡市で事件に遭い亡くなられましたのでまだスタートできないでいます。担える人材を探しています。(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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