編集後記「風蕭蕭」シリアで拘束されていたフリージャーナリスト安田純平氏の会見から

2018年12月号 連載
by 知

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記者会見するフリージャーナリストの安田純平氏

「国家というのは原則として人の命を守る存在であると思うのですが、戦争というのは国家が人を殺すという決定をするわけですね。それがどのような影響を及ぼすのか、殺された人はなぜ殺されなければいけなかったのか、国家がそういった行動をすることについて我々国民はそれで良いと考えるのかどうなのかということを判断する材料は絶対に必要だと思います」

(安田純平・シリアで拘束されていたフリージャーナリスト、11月2日、日本記者クラブでの記者会見で)

帰国後初の記者会見で安田氏は戦場ジャーナリズムの必要性を聞かれ、こう答え、次のように続けた。

「そのための判断材料は当事者である国家から提供されるものだけではなくて、第三者から提供されるものがあるべきだと考えています。したがって、非常に厳しい場所であっても、現地の情報を取りに行く人というのは絶対必要であるというのが私の考えです」

ジャーナリストとして当然の気構えを述べた。しかし、40カ月の拘束を解かれ帰国した安田氏を待ち受けていたのは、ジャーナリズム論そっちのけの「もっと頭を下げろ」という圧力だった。

圧力の主「世間様」は、戦地に入ったジャーナリストを助けるのに国費を使うなという定番の「自己責任論」が無理筋だと分かると、批判の論旨を「準備が足りなかったのではないか」に変え、さらに「なんだかんだ言ったって取材の成果はなかったじゃないか」へとずらし、ネットで叩き続けている。

木に登ったサルがとにかく落ちれば愉快のようで、匿名の安全地帯から愛国者気取りで非難し、他人が頭を下げる姿を見て、自分が下げさせたかのように勝ち誇る。実にくだらぬ娯楽にはまったものだ。サルが木から落ちる姿って、そんなにおもしろい? そんなことよりそれぞれ、木の上や山の頂を目指したら。

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