森・濱田松本の呆れた第三者委「ボッタクリ」

2018年12月号 DEEP

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東大医科研発のベンチャー企業で、ジャスダック上場のテラ(社長・遊佐精一)が、8月に設置した第三者委員会と、その調査結果や費用を巡って揉めている。これまで有識者やジャーナリストが第三者委を批判することはあったが、調査対象の企業そのものが第三者委と紛争を起こすのは異例のことだ。

「調査の経緯も調査報告書の内容にも、第三者委の常識から考えて重大な問題がある。加えて第三者委の費用請求が合計1億1700万円とは、前期のテラ社の売上高の12%強と法外だ。そもそも何が不祥事なのかさっぱり分からなかったのに、なぜそれだけ費用がかかるのか」

10月24日の決算説明会で憤りを露わにしたのは、テラの代理人である郷原信郎弁護士。テラ側は減額を求める方針だ。

第三者委が依頼された調査事項は2点で、①今年4月2日に締結したGFAキャピタルとのファイナンシャル・アドバイザリー(FA)契約が取締役会を経ていないことの是非、②矢﨑雄一郎・前社長による18年の持株売却がインサイダー取引にあたるか否か――であった。

ところが、第三者委の報告書は、問題の背景にあった主要取引先の医療機関「医創会」との不適切な関係を明らかにしたものの、肝心の調査事項の2点に具体的にどう問題があったかについて結論を示していない。

テラ側の反論は、矢﨑氏による株式売却は決算発表の後に行われた相対取引であることから、インサイダー取引に当たらないというもの。FA契約も取締役会決議の義務はなく、事前に全取締役と監査役に説明資料も送付しており問題なかったと主張。他にも報告書に複数の事実誤認があると批判している。

依頼事項からズレた結論を出したのに報酬だけやけに高い。過去に第三者委の委員を務めた経験のあるベテラン会計士に聞くと、「調査範囲は最初に決める事項で、それが無際限に広がっている時点で極めて杜撰。結論を何も書いていないし、調査結果を会計基準に照らして評価することもしていない。この報告書は成果物とは言えない。この程度の調査報告書なら、大手監査法人によるデジタルフォレンジックを行ったとしても4千万円程度です」という。

社員数が30人を割っていたテラに対し、第三者委は40人を超す弁護士や公認会計士を送りこんだ。第三者委を主導したのは大手法律事務所の森・濱田松本法律事務所である。所属弁護士は直接、委員に名を連ねていないが、委員を推薦したのは森濱で、調査補助者に10人の弁護士を投入した。大半が弁護士登録したてのアソシエイトなど若手ばかり。経験が浅く調査が行き届かないのも当然で、頭数でタイムチャージを稼ぐボッタクリ商法としか見えない。

「調査報告書の不備を委員長に指摘したら森濱の事務所に呼ばれたが、第三者委の委員3人にゾローッと10人近くの弁護士が集まっていた。後で確認したら、全員のタイムチャージ分が請求されていた」(郷原氏)

実は森濱とテラは利害関係があった。17年12月期まで会計監査人だった監査法人トーマツとの監査報酬減額交渉にあたり、第三者委設置とともに契約を打ち切っていた。台所の苦しいテラでの「最後の仕事」とばかり思い切りむしったのか。大手ローファームの正体見たり。

   

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