DMG森精機への質問と回答

2018年11月号 INFORMATION

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①御社は、2015年12月期の連結財政状態計算書において、ギルデマイスター社(以下DMG社)の買収に伴う無形資産548億円と「のれん」668億円を資産計上していますが、その後の事業年度において減損は行われていません。この企業結合は結合時点において超過収益力が認められず、その後の事業年度においても、DMG社の収益力は落ちています。DMG社に関する無形資産と「のれん」は減損すべきではありませんか?

答 当社は、2015年4月にドイツAg社を連結し、その後Ag社の資産再評価を経て、2015年12月の決算において、無形資産548 億円、のれん668 億円を計上しました。無形資産には、お客様資産、技術資産、コアブランド、企業ブランドが含まれております。これらの資産の内、お客様資産、技術資産、コアブランドについては償却対象資産となっており、毎年約20億円の定額償却を行っております。のれんについては、IFRSを適用しており、償却は発生しておりませんが、毎年減損テストを実施しております。Ag社は、ドイツ証券市場に上場維持していることから、業績の開示義務があります。その開示情報から、Ag社のEBIT(営業利益)は、2016年度が104百万ユーロ(130円/EUR換算で約135億円)、2017年度が180 百万ユーロ(同234億円)と大幅な黒字を計上しており、当社は、減損テストを実施しましたが、のれん等を含むAg社の帳簿価額が回収可能価額を下回っておりました。今2018年度のAg社のEBITの公表予想は200百万ユーロ(同260億円)とさらに増大します。以上のように、Ag社の業績は順調に拡大しており、Ag社に関する無形資産及びのれんを減損する必要はないと考えております。仮に、日本の会計基準を採用した場合、20年間でののれんの定額償却により年間約33億円の償却費用が発生します。しかし、Ag社の実現収益貢献との対比では負担は大きくなく、また、Ag社がDMG MORIグループにもたらしている、新技術やIndustry4.0への展開などの顧客価値創造力、まさにのれんの本源価値を考慮するならば償却負担は軽微なものと考えられます。さらに、当該非資金費用は企業価値算定の基礎となるフリーキャッシュフローには何ら影響を及ぼすものではありません。

②御社の2017年12月期の連結財政状態計算書には、ドミネーション・アグリーメントに基づく株式買取並びに補償金支払債務1017億円が「その他の金融負債」として計上されています。御社はこの債務の支払資金をどのように調達するおつもりでしょうか?

答 2016年8月に成立した「Domination Profit and Loss Transfer Agreement」により、当社がドイツAg社の事業、損益、BSを完全にコントロールできるようになりました。一方、当社はAg社の非支配株主がその株式を当社へ売却したい意向を示した場合、当社はその株式を買取る義務が発生しています。その買取価格はAg社1 株当り37.35ユーロとなっております。当社のAg社株式の保有比率は現在76.1%となっており、残り23.9%が非支配株主の所有となっております。当社のBSには、非支配株主が保有する株式比率23.9%を1株当り37.35ユーロで買取ることを前提に、その買取金額を株式買取負債として計上しております。その総額は2018年6月で946億円となっております。現状、Agの株式は、資本市場において1株当り44.8ユーロで取引されており、当社の買取義務価格37.35ユーロを大きく上回っていることから、Ag社の非支配株主が当社へ株式買取請求事例はほとんど見られません。Agの非支配株主の株式所有コストは、当社の買取義務価格37.35ユーロを上回っているものと想定され、当面、当社へ買取請求する確度は低いものと想定しております。しかし、Ag社の非支配株主が大量に当社へ買取請求を実施する場合には、当社は銀行借入により買取請求に応じる予定です。既に、メインバンクとは当該買取請求に係る借入は問題ないと確認しております。また、当社は、前2017年度に300億円のフリーキャッシュフローを創出し、今2018年度も350億円程度のフリーキャッシュフローを稼ぐ見込です。当該借入についても十分な返済余力があると考えております。

③御社の2016年12月期の単体損益計算書には75億円の移転価格調整引当金繰入額が特別損失として計上されていますが、これはどのような内容のものでしょうか?

答 米国子会社に対する移転価格調整引当金となります。米国において、多様なお客様ニーズに対応するため、代理店ビジネスから直販ビジネスへの移行2015年から2016年にかけて行っており、移行に伴う一過性の費用が発生しております。当該費用に対して、移転価格税制の見地からの移転価格(当社の販売価格)の減額を行うことにより補填する必要があるため、引当金を計上しております。当該引当金は、グループ会社間での取引に対するものであるため、連結財務諸表では相殺消去されております。

   

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