神津 里季生 氏連合(日本労働組合総連合会)会長

「オール沖縄」が突破口!野党は「力合わせ」を急げ

2018年11月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

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神津 里季生 氏

神津 里季生 氏(Rikio Kouzu)

連合(日本労働組合総連合会)会長

1956年生まれ。東京大学教養学部卒。新日本製鐵入社。1984年より組合専従となり、鉄鋼労連本部在任中に在タイ日本大使館派遣。2002年新日鐵労働組合連合会会長、10年基幹労連委員長、15年10月より現職。犬3匹猫2匹と、一つ屋根の下で「共存共栄」を楽しむ。

――「オール沖縄」が擁立した玉城デニーさんが激戦を勝ち抜きました。

神津 自公は県外から国会議員や地方議員、秘書団まで送り込み、政権丸抱えの選挙戦を展開したが、それを跳ね返した沖縄の皆さんは立派です。「オール沖縄」の真ん中で連合沖縄も奮闘しました。

――総裁選で、安倍総理は国会議員票の8割強を制したが、地方票(党員・党友票)は55%の支持にとどまりました。

神津 政府がアベノミクスの成果を喧伝しても地方は疲弊するばかり。党員党友のほうが国民世論にずっと近いのです。

力合わせのシンボル「統一名簿」

――それでも内閣支持率が5割を超えているのは、なぜですか。

神津 昨今の政治情勢のままでは、世の中全体が「どうせ変わらないさ」とか、「とりあえずこのままでいいんじゃないか」とか、そんな雰囲気に流されているからだと思います。そんな諦めにも似た感情の一方で「一強政治はよくない」と考えはじめた国民が増えています。

――先の国会は問題だらけでした。

神津 一強政治の弊害は三つあります。第一に、野党の質問や追及に正面から答えることなく、法案採決の強行を繰り返す独善的な姿勢です。第二に、前代未聞の公文書の改ざんや森友・加計学園の問題、防衛省の日報隠しなどが相次いだにもかかわらず、真実を究明する姿勢が欠けていたことです。国民の7割が怪しいと思っている疑惑にフタをしていることは、世論調査でも明らかです。第三に、これが最も深刻な危機をはらむ問題ですが、我が国の20年先、30年先のグランドデザインが示されぬまま放置されています。端的に言えば、現政権は社会保障の「負担の構造」にメスを入れず、目先のつじつま合わせに終始しています。

――野党各党は麻生財務相の留任に猛反発。各社の世論調査も「(留任は)よくない」が5割を超えています。

神津 どこ吹く風じゃないですか。安倍総理からすれば、麻生さんは政権安定の要ですから動かしようがない。むしろ、10月下旬に召集される臨時国会に自民党が単独で憲法改正条文案を提示する方針を固めたことが気掛かりです。一強政治は怖いと思います。

――来年は統一地方選と参院選が重なる12年に一度の亥年の政治決戦ですね。

神津 前回の亥年(07年)の参院選で自民党は大敗し、第1次安倍政権は退陣に追い込まれた。参院第一党になった民主党は、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」を活用して、国会運営の主導権を奪い、2年後の政権交代に繋げました。6年前の参院選は野党の大敗でしたから、一強打破の旗印のもとに野党が一致団結すれば、大きな挽回のチャンスが生まれます。昨年10月の衆院選で野党は小選挙区で大敗したが、政党名で投票する比例区では(民進党から分かれた)立憲民主と希望(現国民民主)両党を合わせると2076万票となり、自民党の1855万票を221万票も上回っていました。一強政治をよしとしない有権者が如何に多いか。決して安倍政権が選挙に強いわけではありません。

――しかし、ピーク時15%を超えていた立憲民主の支持率は6%に下がり、国民民主に至っては1%の超低空飛行です。

神津 野党の力合わせの姿が見えてこないから、誰も振り向かない。一強政治はよくないとする多くの国民世論を引きつけるような絵姿に全くなっていない。

前回の参院選で、野党4党は32の1人区全てで候補者を一本化しました。それなくして多弱の野党に勝ち目がなかったからです。ところが、来夏の参院選まで10カ月を切ったというのに、野党候補の一本化はまるで進んでいません。懸念されるのは、昨秋の民進党分裂に際し「排除された」と言う怨念が、立憲と国民両党間にわだかまっているのではないか。そういう雰囲気がある限り、参院選で勝つことは不可能です。

思うに、オール沖縄の勝利は、中央集権的な一強政治を打ち破る突破口を開いた。立憲・国民・共産・自由・社民と無所属の会の5党1会派が力を合わせて、オール沖縄の側面支援に徹しました。それぞれの地域の生活者と働く者が、本来の「主役」として一致団結することが、何より重要だと思います。それぞれのオール地域、その成功例がオール沖縄であり、地域ごとに同志が力を合わせてオール北海道、オール東京という具合に全国各地でオール〇〇を立ち上げていくのです。その中核に各地方連合会があります。

野党全体の力合わせの象徴としては、統一名簿も到達点の一つです。今、衆目の一致する野党のリーダーは、立憲民主の枝野(幸男)さんであり、野党各党が持つ多様性を包み込む力と、野党第一党らしい懐の深さを見せて欲しいと思います。

連合発「36(サブロク)の日」のうねり

――来年11月21日、連合は「結成30周年」の記念すべき日を迎えます。

神津 私たち連合は「力と政策」を標榜し、29年前に大同団結した労働組合のナショナルセンターです。連合の700万人の組合員は、基本的にごく普通の国民・市民の目線を持った働く者の集団です。

働き方改革に関しては、罰則付きの時間外労働の上限規制や、不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など大いに評価できる一方、「高度プロフェッショナル制度」という長時間労働、過労死・過労自殺の危険性が増すような制度が導入されてしまいました。かくなる上は、長時間労働を減らす一大キャンペーンを張るとともに、全ての職場において、より良い働き方を目指して36協定の締結を促す運動を、「Action!36」と銘打って開始しました。その旗印として、毎年3月6日を「36(サブロク)の日」と命名すべく、日本記念日協会に申請しました。労働組合の有無にかかわらず、時間外労働をさせるには労使協定が必要なことを、あまねく国民に知ってもらいたいのです。「36(サブロク)の日」は長時間労働をなくし、過労死・過労自殺ゼロを願うあらゆる人たちと結び合う運動のシンボルになるでしょう。連合発の大きなうねりにしたいと思います。

(聞き手 本誌発行人 宮嶋巌)

   

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