2018年10月号 DEEP [ディープ・インサイド]
水戸大家さんの峯島忠昭社長(同氏ブログより)
「かぼちゃの馬車」問題をきっかけに、スルガ銀行による不適切な不動産担保融資が1兆円規模に達することが明らかになった。都内を中心に「スルガありき」のビジネスを展開していた不動産会社は多く、今後、倒産や廃業に追い込まれるところが続出するのは間違いない。
実際、東京・六本木に本社を置く「株式会社水戸大家さん」は9月末で廃業を決めた。09年に同社を設立した峯島忠昭氏(37)はもともと情報商材ビジネスを手がけており、「世界を旅する年収1億円ブロガー」が謳い文句の川島和正氏の「川島塾」で学び、あの「秒速で1億円稼ぐ男」与沢翼氏とも交流がある、その筋の名物社長だ。その奇妙な社名は「水戸市のサラリーマン大家さん」という同氏(茨城県出身)のブログに由来している。金融緩和と不動産バブルを追い風に、安定収入のあるサラリーマンは与信がつきやすいとして「金持ちになりたければ不動産投資を始めよう」と盛んに煽った。
「2年で資産10億円になった人多数! 自己資金が少なくても、年間家賃収入1億円超えが続出する不動産投資の極意を、あなたに公開いたします」などというウマい話を信じた人も多かったようで、物件仲介や融資サポートを手がける同社の売上高は昨年10月期には15億円程度まで拡大し、従業員も40名に達していたようだ。無論、峯島氏は水戸にはおらず、最高級賃貸マンション「東京ミッドタウン・レジデンシィズ」の18階に住んでいる。
しかし、同社が指南していた「1物件1法人スキーム」と呼ばれる、物件ごとに法人を設立する手法は、銀行から実質的な個人負債の全体を見えにくくして投資を拡大させる裏技で、危うさが付きまとった。
こうしたなかスルガ、東日本銀行という「審査の甘い二大銀行」(不動産業者)で不正が発覚し、万事休す。投資用不動産を巡る環境は激変し、裏技に与する金融機関も消えた。峯島氏は「潮時がきた。会社には借金がないから倒産せずに廃業できる。次は仮想通貨関連の情報ビジネスを始めるつもり」などと嘯く。借金漬けにした顧客は見て見ぬふりか。