橋本康治 ライステクノロジーかわち代表取締役

ライスジュレで「食と農業」に新風

2018年10月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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橋本康治氏

橋本康治氏(はしもと こうじ)

ライステクノロジーかわち代表取締役

1966年大分県生まれ、52歳。89年鹿児島大学水産学部を卒業し、ヤンマーディーゼル(現ヤンマー)に入社。名古屋市立大学経営学部でMBAを取得。ヤンマーアグリイノベーションの社長となり、2016年にその子会社ライステクノロジーかわちを設立。

――ライスジュレってどんなものですか。

橋本 ご飯をゲル状にしたものです。農業・食品産業技術総合研究機構の研究員の方が、米粉パンの普及のためにパサパサしないおかゆ入りのパンを作ろうとして、高アミロース米のご飯をミキサーにかけ放置して帰宅。3日後に見てみたら、柔らかいままでびっくり。ゲル化していることに気づかれました。

――食材として驚くほどの使い道があるそうですね。

橋本 原材料は米ですが味、香りはほとんどなく、色も白なので様々な食材に混ぜることができます。最大の特徴は保水性、保油性に優れていることで、マヨネーズを使わないポテトサラダや、冷解凍を繰り返してもベチャベチャにならないシュークリームを作ることができます。柔らかめのルーを目一杯詰め込んだカレーパンを作ることもできます。形を保持する力も強く、角が垂れない生クリームや長時間溶けないアイスクリームを作れます。チーズの食感の代替として使用することで、チーズを使わない低カロリーのクリームチーズやチーズケーキもできます。増粘剤を使わないドレッシングやハンバーグも作れます。小麦粉代わりに使えるので、グルテンフリー化も簡単です。

――この技術をビジネスに結びつけようと考えたきっかけは。

橋本 ヤンマーはヤンマーアグリイノベーションという会社を作って、農業の担い手を育成し、地域を丸ごと活性化する産地化支援事業を行っています。私はその会社の社長として、1年中安定供給を受けられる米の加工で人々が幸せになれる事業はないかとアンテナを張っていたら、農研機構の杉山純一先生がテレビで米ゲルの話をされていて、これはいけると早速会いに行きました。調査すると量産できればマーケットはあることがわかったので、工場を茨城県河内町に建てました。町は給食センターの建物を無償で貸してくれるなど相当なバックアップをしてくれました。

――高齢化と米価低迷でコメ農家がどんどん減っていますが。

橋本 コシヒカリは5月初旬に田植えをして9月末に稲刈りですが、ライスジュレの原料の高アミロース米は丈が低くて茎が太く台風に強いので、田植えを5月末に稲刈りを11月初旬にずらせます。やる気のあるプロ農家にはどんどん農地が集まってきますから、作期が分散すると同じ数の人と機械で2倍の面積の田を作れるようになり、コストが劇的に下がります。販路の開拓など出口戦略は我々が推進します。ライスジュレは「食」だけでなく、「日本の米作りのあり方」も変え、コメの地産地消を大々的に伸ばす商品になると思います。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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