急成長「ケフィア事業振興会」でトラブル続出

2018年7月号 DEEP

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東京都千代田区にあるケフィア事業振興会のビル

帝国データバンクが毎月公表している「全国企業倒産集計」の4月報に、気になる一文がある。最近の特徴のひとつとして「投資に関連する倒産も出てきた」ことを挙げているのだ。

確かに今年に入り、そうした事例が相次いでいる。中高年イベント団体「Hana倶楽部」を展開していたロゼッタホールディングス(1月破産)、健康器具販売のネットワークビジネス大手ジャパンライフ(3月破産)のほか、最近では女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営のスマートデイズ(5月破産)が破綻に追い込まれた。

いずれの事例も、高齢者やサラリーマンなど多数の一般消費者が投資に参加して倒産に巻き込まれたケースばかり。どの会社も、本誌でいち早く取り上げてきたいわゆる『FACTA銘柄』である点も共通する。ここにきて、新たにその仲間入りをしそうな会社がある。食品を中心に通信販売事業を展開するケフィア事業振興会(東京都千代田区・鏑木秀彌代表)だ。5月のゴールデンウイーク明け直後、通販会員に対する支払い延期要請の情報が一斉に流れたのだ。

事の顛末を語る前に、まずは同社の概要を説明したい。ケフィア事業振興会は1992年の創業以来、農産物や健康食品を中心に、キッチン用品、生活雑貨などの通信販売を展開してきた。30社超の関係会社とともにケフィアグループを形成。積極的な広告宣伝で業容を拡大し、会員世帯数は中高年層を中心に200万を数えるという。

同社がホームページ上で公表する17年7月期の年売上高は1004億円にのぼり、売上規模は5年前の約23倍という驚異的な成長を遂げた。これだけの企業を銀行が放っておくはずがないと思いきや、「金融機関からほとんど融資を受けていない」(取引先関係者)。

ならば、必要な資金をどこから調達しているのか。「主に自社グループの通販会員からで、8年前には約8千人から数十億円を調達したこともあった」(同)。これまでにも自然農園オーナー事業のほか、メガソーラーや電気自動車事業のため、その都度、通販会員から子会社と連携してお金を集めた。なかには年利10%を超える金利で資金を募るケースもあったようだ。

約束した元利をきちんと払いさえすれば問題はない。だが、前述したとおり5月上旬、支払いの遅れが一気に表面化。会員には「システム更新に伴う遅れであり、順次支払っていく」と釈明しているが、ケフィアグループ全体に厳しい目が注がれている。相前後して、会員と見られる個人がケフィアを訴えるケースが続出。預託金返還、買戻代金、貸金などを巡って係争中だ。昨年あたりから、子会社のかぶちゃん農園(長野県飯田市・鏑木武弥代表)でも「支払いに支障を来すケースが出ている」(金融機関関係者)。

そもそもグループ全体のガバナンスや財務内容、資金繰りの実態が、外部からうかがい知れない危うさがある。仮に破綻することにでもなれば、多額の資金を投じた高齢者らを巻き込み、大きな社会問題になりかねない。

中小企業庁は3月、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に、先述のかぶちゃん農園を選定した。担い手確保の取り組みを評価されたわけだが、中企庁のこの「目利き」は吉と出るか、凶と出るか。

   

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