編集後記「風蕭蕭」

2018年5月号 連載
by 知

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「今日、どちらかの国がやめましょうとなったら、9月にそれが起きる。(日米)どちらの国も強く言いやすい時代に入った」

(新外交イニシアティブの猿田佐世事務局長、3月27日、日米原子力協定とプルトニウム問題に関する研究報告シンポジウム)

1988年に発効した日米原子力協定が今年7月、満期となり、自動延長となる。このままずっと続くという意味ではない。日米いずれかが、文書によって通告すれば、6カ月後に協定を終わらせることができる局面に入った。

現行協定を20年ないし30年延長させる、あるいは新協定を結び直すという、日本にとってより継続の安定性が得られる道もあったが、日米両国の議会承認を経る必要があり、選ばれなかった。

協定の最大の特徴は「包括事前同意方式」であること。これで日本は米国の技術を使った原子力施設で用いた核物質を、その都度米国の承認を得なくても再処理できる。すなわちプルトニウムを取り出せる。韓国やサウジアラビアが、なぜ我々には認めないのかと怒るほどの特権だ。

もっともその特権を得た日本だが、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場はいつまでたっても動かない。最終工程にある、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を造る装置がうまく動かないのだ。「核不拡散」の見地から、「それなら協定を廃止しても良いのでは」と米国に言われかねない状態を日本自身が作っている。

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