「入学定員超過」日大商学部の補助金没収

2018年5月号 DEEP

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日大の田中英壽理事長

年度末の3月30日、日本大学の臨時理事会が開催された。緊急議題は入学定員超過率について。配布された学部別の「入学定員超過率」一覧表に理事たちの目は釘付けになった。

問題は入学定員が1266人に対して入学者数1515人の商学部。249人の定員オーバーで入学定員超過率が19%になっていた。文部科学省は、入学者数を定員に近づけるため、18年度から私学助成金の交付基準を厳しくし、入学者数が定員の10%を超えた場合、補助金を全額カットすることにした。定員19%超過の商学部は約6億円の補助金を失うことになる。

商学部を除く日大16学部の入学定員超過率はいずれも4%未満。ちなみに商学部と同じく入学定員が1千人を超える法学部マイナス2%、文理学部3%、経済学部2%、理工学部3%と商学部だけが突出している。

高橋史安商学部長は「成績上位者に定員の倍以上の合格通知を出し、他大学に流れると思っていたら、みんな入学してきた。補欠扱いにして入学しますかと念を押すべきだった。合格の出しっぱなしで、何の対応もしなかった」と弁明したが、理事の間から「バカか」の声が漏れた。

大塚吉兵衛学長も色をなし「入学定員120人の医学部は、補欠合格のご両親に念押ししたり、OB枠の補欠に詫びたりして入学者を117人にとどめた。なぜ、医学部方式を取らなかったのか。責任は商学部長と事務局長にある」と突き放した。

日大は、4期目を迎えた田中英壽理事長の下で各学部収入の約3%を本部に積み立てる「財務一元化」を推進してきたが、「高橋さんは、田中理事長が推す候補を破って商学部長に就任したから、本部が救いの手を伸べることはない。商学部自らが銀行から借金をして穴を埋めることになるだろう」(本部職員)

一方、学部側には「合格者を出しっぱなしにした商学部事務局の大チョンボ。昨年10月に事務局長に就いた武内哲夫の責任が重い」との不満がある。その武内の前任の服部史郎は、田中理事長に取り入り、昨秋、「飛び級」で常務理事に抜擢された人物。「武内を事務局長に任命した執行部の責任も問われるので、高橋のクビを切りにくい。6億円の大穴を開けたにもかかわらず、誰も責任を取らずうやむやになるだろう」(元理事)

日大といえば、田中理事長と山口組最高幹部とのツーショットが流出するなど不祥事が相次ぎ、国会でも追及された。結果、日大への私学助成金は15年度の約95億円から16年度の約83億円に減額され、今年度は更に商学部の約6億円が没収される。元理事は「日大の決算は表向き黒字になっているが、各学部の求めに応じて本部から毎年、かなりの貸し付け(支援)をしており、それを差し引くと、相当の赤字になっている。商学部を助ける余裕はない」と言う。

文科省が定めたルールを破り、「補助金没収」のペナルティーを科されても、日大が安閑としていられるのは、文科省が「個別の大学経営にかかわるから」と、処分を受けた大学名を公表しないからだ。6億円の補助金がなくなれば教育環境は悪化する。図書館の本が買えなくなり、ゼミや講座も減らされる。しわ寄せを受けるのは学生ばかり。まず商学部長らのクビを切り、日大の全役職員の給料を減らして、教育環境を守るべきだ。

   

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