「モンゴル新空港」開港延期で「657億」円借款の返済絶望

2018年5月号 BUSINESS [インサイド]

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モンゴルの首都ウランバートルに

建設中の新国際空港のオープンが延期に延期を重ねている。海の向こうのことと思うなかれ。この事業には日本政府が約657億円もの円借款を供与しており、この返済の見通しが立たなくなっているからだ。

ウランバートルの新空港は、現在のチンギスハーン国際空港が地理的・気象的な制約が多く、遅延や欠航が頻発しているため、首都から約50㎞離れた場所に新設することになった。2008年に建設が始まり、当初の開港目標は15年とされていた。ところが、開港は17年に延び、その後18年になり、遂にバト・エルデネ道路・運輸開発大臣が最近、19年にずれ込む見通しを明らかにした。理由は「管理上の問題」(同大臣)とのことだが、詳細はよく分かっていない。

一番の問題は、日本政府が供与してきた円借款の返済だ。人口317万人、名目GDP111億ドル(約1兆2千億円)という小国の一事業に、日本政府は累次に渡って計657億円もの円借款を投じ、施工を三菱商事と千代田化工が請け負うなど、オールジャパン体制で支援してきた。

その返済が、最初の供与から10年後となる今年の5月以降に始まる。18年には約9億円返済されるはずだが、空港がいまだ完成していない上、経済不振で17年から国際通貨基金(IMF)の管理下にあるモンゴル政府には返済能力はないと見られ、日本政府の頭痛の種となっている。

さらに厄介なことは、インフラ輸出戦略を掲げる安倍政権にとって、輝かしい実績となるはずだったモンゴル新空港プロジェクトが「失敗の見本」のレッテルを貼られ、野党の追及を受けかねないことだ。

   

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