徳重 徹 テラドローン代表取締役社長

日本初「メガベンチャー」に挑む

2018年5月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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徳重  徹氏

徳重 徹氏(とくしげ とおる)

テラドローン代表取締役社長

1970年山口県生まれ。九大工学部卒。94年住友海上火災保険に入るも4年で退社。渡米しベンチャーのインキュベーション事業に従事。2010年日本でテラモーターズを起業。16年テラドローンを設立。

――日本経済の立て直しにはメガベンチャーの登場が必要だと言い続けています。

徳重 米国に渡りシリコンバレーでベンチャー企業の創業支援をしていたとき、日本から来た通産省や自治体の人に「産業はどうやって作るんだ」と聞かれ、自分がやろうとしているベンチャーとは産業を作ることだと気付きました。シリコンバレーでは当時、優秀な人がみんなグーグルに入り、アメリカを牽引し始めていました。一方、日本はその頃、大企業がどんどんおかしくなっていきました。この原体験から、日本経済を立て直す「解」は今もメガベンチャーを作ることだと考えています。

――起業は難しくないですか。

徳重 今は成功のカギが二つあります。一つはディストラクティブ・テクノロジー(破壊的技術)です。パナソニックやシャープがなぜおかしくなったかというと、アナログからデジタルへの技術の大きな変化で、大切なものが、作り込みの品質から、意思決定の速さや市場選定、リスクテイクに変わったからです。代わってサムスンなどが成功を遂げました。100年続いたガソリンエンジンがEVへと変わるとき自動車産業でも同様のことが起きます。そこで電動バイク事業を立ち上げました。二つ目は新しい産業の黎明期であることです。それでドローン事業を始めました。起業は風にうまく乗れるかがすべてです。

――日本人はなぜうまく起業ができないのでしょう。

徳重 断言できます。やってみないとわからないのに、やらないからです。大切なのはいかに早く間違え、いかに早く立ち上がるかです。新規事業づくりとは、暗闇の中で光を探し小さな穴をこじ開けていく作業ですが、今の経営者層はデフレのため40歳代のバリバリの時に「経費圧縮」と真逆のことをやってきました。それでは無理です。

――今がダメなだけですね。

徳重 50年前、日本企業は極めて積極的でした。そのおかげで日本人は今でも、海外の人に会うなり高い評価を受けます。ただ、日本の大企業はこの無形資産を積極的に使おうとしません。日本人はミャンマーで「NATO」と言われています。「ノーアクション・トークオンリー」。調査ばかりでビジネスしようとしないという意味です。

――何が日本企業をここまで消極的にさせているのでしょう。

徳重 空気感として、とにかくコンプライアンスに従ってきっちりやるんだという感じになっています。今こそ、鄧小平の言う「白い猫でも黒い猫でもネズミを捕る猫は良い猫だ」でいくべきです。多少悪いことが起きても、そこは経済成長がカバーするから大丈夫、というぐらい積極的になるべきです。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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