「五つ星」目指す大型商業施設「プライムツリー赤池」誕生

セブン&アイHDが東海地方初となるショッピングモールをオープン。「上質」と「食」を重視し、激戦地で勝負。

2018年2月号 INFORMATION

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名古屋市に隣接する愛知県日進市は、1970年代に地下鉄と名鉄の駅が開業してから急速に発展した町。自動車産業の関連企業が集まる西三河にもアクセスが良く、地の利を生かして宅地開発が進み、人口増が続いている。

昨年11月24日、その日進市に大型商業施設「プライムツリー赤池」がオープンした。開発中の住宅地「日進赤池ヒルズ」の一画に位置し、名古屋駅から30分程度の地下鉄赤池駅からも近い。セブン&アイ・ホールディングスでは東海地方初のショッピングモールとなる。

訪れた人々の交流の場になっている「プライムホール」

セブン&アイは前年に、大型商業施設「アリオ」の新規出店の凍結を発表したばかり。日進市が位置する東尾張地域では大型店の出店が続き、「戦国時代」ともいわれる。そんな中でオープンしたプライムツリー赤池は、これまでとは違うコンセプトを凝縮した新しい都市型ショッピングモールという位置づけだ。売り場面積4万3600㎡、核となるイトーヨーカドーのほか映画館や衣料品など180ものテナントが入居する。「プライム(=極上)」と名のつく新SCとは――。開業したての同店を訪ねた。

レストランやイートインが充実

1階のイトーヨーカドーは食品専門

平日、昼下がりのプライムツリー赤池。中に入ると、静かな周辺からは意外なほどの賑わいが広がっている。子ども連れからお年寄りまで、行き交う人々の年代はバランスよく幅広い。

グランドゲートを入ると、まず目に入るのは華やかなシャンデリアの照明。シックな内装と演出は、施設全体に共通だ。施設中央には3階までの吹き抜けの空間「プライムホール」がある。大階段「プライムシート」や大スクリーンが配置され、スクリーンで周辺情報を見ながら腰掛けて談笑する人々の姿が目につく。ここでは演奏会などのイベントも折々に開催されている。

施設の1階から3階には、ファッションや雑貨などの店舗がずらりと並ぶ。印象的なのは、食の充実だ。グランドゲート近くにある大型スーパーのイトーヨーカドーは、食品専門。自然派ワインや外国産はちみつの棚があったり、鮮魚コーナーでお寿司が並んでいたりと、リーズナブルでも上質感やヘルシー志向が感じられる彩り豊かな品揃え。扱う総菜の品数も豊富だ。同じフロアにはカフェやバル、菓子、加工食品などのテナントも入り、近くには購入した食品をその場で食べられる100席ものイートインスペースが設けられている。

さらに2階には多彩なレストランが集まる「レストランヒルズ」、3階には広々としたフードコート「フードラウンジ」がある。昼時にはそれぞれ行列ができる賑わいで、定食、ラーメン、中華にイタリアン、ハワイアンなどなど選択肢もいろいろ。プライムツリー赤池の飲食、食物販のテナント数は計52店舗。つまり全体の3分の1近くが食関連で、その比率はセブン&アイグループの大型店の中でも高い。

周辺に若い世代が多く住んでいることを反映して、子ども関連のテナントも充実。「アカチャンホンポ」やビックカメラ初のおもちゃ単独店舗「ビックトイズ」のほか、室内の遊び場「キドキド」や「ひつじのショーン」のファミリーファーム、無料の「スマイルスクエア」などが並び、元気に遊ぶ子どもたちでいっぱい。ベビールームやキッズトイレは各階に配置されている。

地域コミュニティの場を目指す

施設のあちこちに休息やお喋りのスペース

インフォメーションコーナーの人体型ロボット

壁面で市政発信も

施設内で便利なのが、手荷物を預けられるクローク。購入した商品はポーターが車まで運んでくれるサービスもある。また歩いていて気づくのは、あちこちにソファや椅子、テーブルが配置されており、疲れたら自由に腰掛けられるスペースが豊富なこと。子ども連れや高齢者、現役世代の友人同士らが集まってお喋りする光景がそこかしこにある。買物やレジャーだけでなく、施設全体が憩い、集いの場としても機能しているようだ。

セブン&アイによると、プライムツリー赤池の施設デザインのコンセプトは「ファイブスターモール」。地域の人たちがさまざまな目的で活用し、交流するコミュニティの場を目指している。

施設オープンに際し、セブン&アイは日進市と10項目で地域活性化包括連携協定を結んだ。市政を発信する壁面の「情報スペース」や図書館とコラボしたレストスペース設置もその一部。地域活性化に持続的に取り組む姿勢は、「コミュニティの場」というコンセプトにも表れているのだろう。協定には災害時の助け合いの項目などもあり、今後、施設内に保育園もできる予定だ。

オープン後の手応えは「来店客数・売上とも好調」というプライムツリー赤池。世代を超えて人々が集まる「極上」ショッピングモールは、名実ともに地域に根ざした存在に進化していくか。激戦地に挑んだ後発モールの今後に注目だ。

(取材・構成/編集委員 上野真理子)

   

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