2018年1月号 連載
横綱白鵬が九州場所の優勝インタビューで音頭をとって、観衆が笑顔で万歳を三唱した。私はテレビ中継を見ていたが、日本人のお人好しに苦笑した。
後日、横綱審議委員会の委員長が「相撲界が厳しい中で何で万歳ができるんだろう」と指摘し、相撲協会の理事会が白鵬に注意をした。妥当かどうかはさておき、こういう批判が成り立つことは千秋楽の時点でも誰でも想像できそうな話だった。白鵬は暴行現場同席をすでに認め、日馬富士を途中で止めたにしたって、責めの一端を負っておかしくない立場にいた。
観衆の多くは咄嗟に横綱に合わせたのだろう。とりあえず相撲界がよくなることを願って万歳した人もいるかもしれない。違和感を抱きつつ、周囲と違う行動をとれなかった人もいるだろう。テレビに映らない席では万歳しなかった人もいたかもしれない。
それにしても、野次のひとつも飛ばす度胸のある人はいなかったのか。従順な人々。異論を唱えにくい社会。ちょっと私は考えすぎなのか。
FACTAらしい広がりのある相撲ネタを楽しみにしている。
日本記者クラブ会員 高谷秀男