編集後記「風蕭蕭」

2017年12月号 連載
by 知

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「不適切行為」について記者会見を開いて陳謝する川崎博也・神戸製鋼所会長兼社長

「各工場が困りごと、問題を抱えた。それを本社が把握し、解決する姿勢を見せなかったことなど、経営管理構造そのものが主要因ではなかったかと考えております」(神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長・11月10日の記者会見)

多品目の金属製品の検査データを改ざんしていた神戸製鋼所。川崎氏は9月の問題発覚後、たびたび記者会見を開き、謝罪の言葉を繰り返すのだが、正直言って何が原因で、どう改善しようとしているのかよくわからない。

事業部門への統制が収益評価偏重だった、工場運営が品質より納期優先だった、入力された検査値を品質保証部門や製造部門で書き換えることが可能だったのでやってしまった、と「原因」を列挙するのだが、問題の根源は、本当にガバナンス体制や検査体制にあると言えるだろうか。

素材メーカーは、顧客から注文を受け、仕様、分量、納期を顧客との間で詰めたうえで製造し販売する相対取引が主。顧客は馴染みがほとんどで、ずっとこの先も付き合う間柄だ。そこを品質保証部門の従業員が、別に私腹が肥えるわけでもなし、わざわざ進んで不正に手を染めるはずはない。

なのに10年以上の長きにわたって、多くの工場で多数の従業員が品質検査のデータをごまかし続けた。であれば根源的な問題は、品質検査でなく「製造能力」にあると考えるべきではないだろうか。 「仕様通りに仕上がらない品」が想定以上にできてしまったが、納期も迫るし、会社として利益も出さなければならないからと、「仕様通りの品」として売り渡していた︱︱。裏返して言えば、神戸製鋼所は仕様通りにモノを造れないのではないか、との疑念である。

顧客や消費者が持った、メーカーとして譲ることのできないこの疑念を晴らさなくては、メーカーとして存続は危うい。

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