2017年12月号 DEEP [インサイド]
舌鋒鋭い中国批判を看板にテレビ討論番組の常連だった金美齢が旭日小綬章を受章した。文化の日、テレビ各局のニュースで「亡き連れあいは、正直が最善だとずっと言ってましたので」と喜びを語り、受章理由は「日台関係構築に尽力」と伝えられた。ところが、内閣府HPは受章の「功労概要」を「日本語普及功労 日本文化普及功労」と記しており、「日台関係構築に尽力」ではない。日本の実質大使館である日台交流協会が関知してないのは、外国人受章ではなく、日本人としてのものだからである。
日本統治下の台北で生まれ、名門台北一女を卒業。裕福な商人に嫁ぎながら離婚し、1959年、台湾企業のツテを頼って日本に留学。64年には台湾独立運動家の「亡き連れあい」と再婚した。このため蒋介石独裁体制下の“ブラックリスト”に登録され、日本で事実上の亡命生活を送る。金はIT台湾大手をバックボーンに日本語学校を開設。これが30年以上に及ぶ亡命生活を支えた。
2000年に台湾は本省人の陳水扁・民主進歩党政権となり、金も総統府国策顧問に就任する。「彼女を知る人は多くなかった。海外の独立運動は全く報じられませんでしたから」(在台邦人ジャーナリスト)。
08年に外省人の馬英九・国民党が政権を奪還すると「死んでも中国人にはなりたくない」と日本に帰化。金と安倍晋三の交友は広く知られ、金自身が安倍晋三の“婆や”と自称しているほど。安倍の雌伏時代に故岡崎久彦、櫻井よしこら安倍応援団の一角を占めた。芸能人の指定席ともいわれる旭日小綬章だが、安倍“おトモダチ”受章以外の何物でもあるまい。台湾では来年は李登輝が金鵄勲章とブラックジョークが飛び始めている。(文中敬称略)