大塚耕平 氏
民進党新代表
2017年12月号
POLITICS [インタビュー]
1959年生まれ。早大政経学部卒業。日本銀行を経て2001年参院初当選(現在3期目)。内閣府、厚労両副大臣を歴任。早大博士(専門はマクロ経済学)。政界屈指の経済財政通である。10月31日代表就任。
――元祖中間派の大塚さんが無投票で代表に選ばれました。
大塚 立憲民主党、希望の党、無所属に3分裂した民進党は、46人の参院議員を中心に再出発することになり、大局的な観点から、私に一本化されました。
――次期衆院選で立憲と希望をつなぐ民進が中心となって政権交代を実現する考えですか。
大塚 日本国民が主権者であることを実感できる唯一の機会は、総選挙で政府を選ぶときだけです。我々野党には主権者である国民に政権選択の機会を提供する責務がある。次期総選挙へのカウントダウンは始まっています。志と目標を共有できる他党の仲間と手を携えて、再来年の統一地方選と参院選を勝ち抜き、次の総選挙で政権選択可能な状況を創造します。
――総選挙で自民・公明両党が3分の2の議席を占めました。
大塚 自民党は小選挙区は得票率48%で、定数289の4分の3を超す218議席を獲得した。比例得票は33%(有権者比では17%)で、全議席の61%の議席を占めた。この結果は、小選挙区制がもたらしたものです。
昨夏の参院選で民進党の比例票は1175万票(自民党の2011万票の58%)でしたが、元民進党の仲間を中心とする立憲民主・希望両党を合計すると2076万票となり、自民党の1855万票を221万票も上回った。投票行動を反映した民意を踏まえるなら、国会での野党の質問時間を議席数に応じて削ることなど考えられない。野党の審議時間を減らすことによる「モリカケ隠し」と言われても仕方ない。
――日経平均株価が約26年ぶりに2万3千円を超えました。
大塚 株価が上がるのは喜ばしいことだが、「いざなぎ超え」の景気回復といわれても実感は乏しい。安倍総理と黒田日銀総裁は「完全雇用に近い状態」を強調しているが、物価は上がらず、実質賃金は下がり、消費支出は減少しています。誰の目にも日本経済は様子が変です。
日銀による異次元緩和が始まって4年半。マネタリーベース(資金供給量)を2年で2倍にすると、物価上昇率が2%になり、経済が好循環になるとの主張でした。今やマネタリーベースは3倍以上に膨れ上がり、金融緩和の行き過ぎと長期化に対する懸念が高まっています。
異常な金融緩和に依存するのはもうやめて、産業政策や人材育成を地道に行うべきです。しかし、黒田総裁が異常に増やしてしまったベースマネーや日銀保有国債は、もはや短期間で戻したり、減らしたりすることは不可能です。だからといって、今以上に「異次元」で「異常」なことを続け、極限へ突き進むのは非常に危ない。
日銀マンとしてバブル崩壊を経験した私の肌感覚では、世界経済は1987年のブラックマンデー前の状況に似ている。経済は生き物ですが、中長期的には合理的なことしか起きない。「山高ければ谷深し」。「いざなぎ超え」や株高に浮かれるべきではない。国会で総理や日銀総裁と経済・財政運営に潜む様々なリスクについて議論しなければならない。
(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)