地盤調査会社が不動産流通業界に殴り込み

2017年1月号 BUSINESS

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「土地の地盤状態を明らかにされたら資産価値が下がる可能性があり、売りにくくてしょうがない」――。インターネットで地盤の安全性を誰でも無料で調べられるサービスを2015年から提供している地盤調査会社の地盤ネットは、不動産流通業界から批判を浴びてきた。「駅から徒歩〇分」との立地の良さだけで物件を高値で売る仲介業者には目障りな存在だ。

その地盤ネットが、17年2月28日から地盤の良い売り物件だけを紹介する不動産情報サイト「JIBANGOO(ジバングー)」を立ち上げる。地盤の安全性を、80点以上「安全=緑」、55点~75点「普通=黄」、50点以下「注意=赤」と100点満点で評価し、80点以上の優良物件だけを紹介するサービス。

地盤のスコアは、国や地方自治体が公開しているハザードマップなどの16種類の公開情報を地図上にすべて重ね合わせたうえで、同社が年間5万件以上行っている地盤調査のデータを加え、災害リスクを「地盤改良工事率」「浸水リスク」「地震による揺れやすさ」「土砂災害リスク」「液状化リスク」の5項目で評価している。

11年の東日本大震災では、湾岸エリアだけでなく、埼玉県久喜市などの内陸部でも液状化被害が発生。16年4月の熊本地震でも、地盤改良した土地などで深刻な建物被害が発生した。南海トラフ地震の発生が懸念される中で、地盤の安全性を心配する消費者は増えている。

しかし、購入前に不動産仲介会社に「地盤の状態を詳しく調べたい」と言っても「売り主の同意が得られない」と断られるのがオチだ。土地を購入し、実際に住宅を建てる時になって、地盤改良工事が必要になり追加費用がかかるケースは少なくない。一方で、住宅事業者が消費者の不安心理につけ込み、不要な地盤改良工事を行うケースもある。地盤ネットがセカンドオピニオンを求められて実施した地盤調査では、約6割が「工事が不要」との結果も出ている。

こうした問題を未然に防ぐには、公開情報などで地盤が安全なエリアを特定したうえで、購入契約前に地盤調査を実施するのが最も有効である。ジバングーでは、スコア80点以上で、かつ購入契約前の地盤調査に同意した売り主の物件だけを紹介。購入希望者は1件当たり5万円の地盤調査を行ってから正式契約する仕組み。その費用でサイト運営費を賄い、売り主の情報掲載料は無料とすることで、できるだけ多くの物件情報を集めようという作戦だ。「サイトオープンまでに約40社の賛同企業を集められる見通し」と意気込む。が、果たして思惑通りに物件情報が集まるか。

不動産流通業界は、あの手この手で新規参入業者を潰してきた前歴がある。ヤフーがソニー不動産に資本参加して15年11月にスタートした物件情報サイト「おうちダイレクト」も、法律違反となる誇大広告表示問題で揺さぶりをかけられ、その後も売り物件が思うように集まらずに苦戦が続く。

売り主にしてみれば、現状では立地さえ良ければ地盤の良さをアピールしなくても高値で売れる可能性が高い。地盤が良くても立地の悪い物件ばかり掲載していてはジバングーの魅力は乏しくなる。そこをクリアして不動産流通に風穴を開けられるのか、注目だ。

   

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