トップアスリートとスポーツ体験

夢の島競技場に8人のトップアスリートが集合。障がいのあるなしにかかわらずスポーツに親しむスペシャルフェスを開催!

2017年1月号 INFORMATION

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DREAM AS ONE.×父子チャレンジアカデミーSPECIAL FES.

大会アンバサダーの為末大さん

今井絵理子参議院議員の手話講座も

東京・江東区の「夢の島公園」の一角にある「夢の島競技場」。400m、8レーンのトラックをもつ本格的な陸上競技場に、11月23日の朝、スニーカーをはいた元気な子どもたちとその父母たちが集まってきた。「DREAM AS ONE.×父子チャレンジアカデミー SPECIAL FES.」に参加するためだ。

「DREAM AS ONE.」とは、「誰もがスポーツに親しむ機会を増やし感動を共有しよう」と、三菱商事が2年前から行っている障がい者スポーツ支援の取り組み。これまでに障がい児スポーツ教室やチャリティーランなどのイベントを開催してきた。一方「父子チャレンジアカデミー」は、トップアスリートの指導を受けながらスポーツを通じ親子の絆を深めるNPO主催のプロジェクトだ。この日は二つのプロジェクトが共同で、障がいの有無にかかわらず「スポーツの魅力を見て、体験して、楽しく学ぼう!」を目的にスペシャルフェスを開催。アスリートたちと共にスポーツを体験する貴重な機会に、遠くは静岡や能登からも家族連れが応募、5歳から12歳まで計508名の子どもたち、父母も合わせると約1千名が参加するイベントとなった。

銅メダリストから車椅子タックル

走り高跳び指導はパラリンピック5大会連続出場の鈴木徹選手

右代選手が指導した走り幅跳び

今井選手の指導でウィルチェアーラグビーの体験

朝10時、開会式とともにフェスの一日がスタートした。寒さに負けない子どもたちの賑やかな声が会場に溢れ、張り切った様子のお父さんたちの姿も目立つ。大会アンバサダーを務めるのは、世界選手権の400mハードルで日本人初のメダリストになった為末大さん。親しみやすい司会ぶりで、早速ウォーミングアップのラジオ体操や体を使った簡単な交流ゲームの進行を務めた。

この日の前半メインのプログラムは、「チャレンジ体験種目」のスタンプラリー。広い競技場のトラックで、かけっこ教室、ウィルチェアー(車椅子)ラグビー、走り高跳び、走り幅跳び、義足体験の各種目に分かれて体験エリアを展開。一つの種目ごとに「参加パスポート」にスタンプを押し、計五つのスタンプがもらえる。体験を指導する7人のアスリートは、みな世界大会に出場経験のある第一線の選手・指導者たちだ。

ウィルチェアーラグビーの体験では、共にリオパラリンピックの日本代表選手として銅メダルに輝いた今井友明さんと池崎大輔さんの2人が指導。実戦で使う競技用車椅子に乗り、まず今井さんに操作を教わる。その後、本当の試合のように池崎さんのタックルを受ける。車椅子同士でぶつかり合うのだ。体験指導を終えた女の子は、「車椅子は重くはないけれど、コーナーを曲がるのが難しかった。ぶつかったときは音が大きくてむっちゃびっくりしました」と初めての競技に強い印象を受けた様子。

走り幅跳びではリオ五輪で日本選手団の旗手を務めた陸上十種競技の右代啓祐さんの指導で、つま先を上げ、かかとだけで歩くところからスタート。最後に砂場で幅跳びをする際は、応援の声と歓声が飛び交った。義足体験のエリアはリオパラリンピック400mリレー銅メダリストの佐藤圭太さんが傍につき、大人も子どもも義足をつけて歩いたり走ったり。体験した男の子は「重くて歩きにくい。走るのは大変だった」と実感を語ってくれた。

フェスには参議院議員の今井絵理子さんも参加。短時間ながら「かんたん手話教室」を開催した。トークセッションの後、後半のメインイベントは子どもたちによるリレーだ。6チームに分かれ、最終走者は為末さんはじめ6名のアスリート。作戦会議を開き、お揃いのカラーのゼッケンをつけてスタートすると、大声援の中、小さい子も大きい子も全速力で疾走。終始リードした黄色チームが優勝したが、リレーの後は「楽しかった!」とたくさんの子どもたちが笑顔を見せた。

障がい者スポーツのヒーローを

大会アンバサダーの為末さんは、以前ヨーロッパで見た光景が競技人生の原風景だという。学校のグラウンドで「年齢、性別、障がいのあるなしにかかわらずスポーツをしている風景」がそこにあった。「スポーツは、境目を超えるのにとても便利。違いはあっても一緒に楽しんで感じてほしい。社会っていろんな人が混ざっている。ハンディのある子もない子も混ざってスポーツをしている状況を作りたい」。今回のフェスは、そんな目標に重なるイベントとなった。参加者もアスリートも、障がいのあるなしはさまざまだが、何より生で接したアスリートたちの実力の凄さを、子どもたちは肌で感じただろう。

「障がい者スポーツの中からヒーローが生まれることによって、本当の意味で人々の意識が変わっていくはず」と語る為末さん。この日、フェスでの体験を話しながら笑顔で帰途につく親子たちの中に、新たなヒーローを生む芽は育ち始めているはずだ。

(取材・構成/編集委員 上野真理子)

   

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