野党共闘は「野合の極み」 怖い参院選「お灸の一票」

山口 那津男 氏
公明党代表

2016年4月号 POLITICS [インタビュー]
聞き手/本誌編集長 宮嶋巌

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山口 那津男

山口 那津男(やまぐち なつお)

公明党代表

1952年茨城県出身。東大法卒。弁護士を経て90年衆院初当選(通算2期)。細川内閣で防衛政務次官。01年参院初当選(現在3期)。09年より党代表(現在4選)。座右の銘は母校水戸一高の校是でもある「至誠一貫」。街頭演説でのニックネームは「なっちゃん」。

――「必ず政権交代の受け皿になる」と訴え、民主と維新が合流します。

山口 一度は政権の座に就いた民主党は決められない政治を繰り返し、内輪もめの果てに分裂しました。その反省は何処へやら。維新の衆院議員21人のうち、松野代表や今井幹事長ら10人は民主党出身であり、いわば「出戻り」です。消費増税に反対して袂を分かった彼らが、なぜ、「復党」するのか。選挙基盤が弱い維新の党の生き残り策ではないですか。党名を変えても中身は民主党の延長だから、新味も大義名分もありません。

――民主、共産、維新、社民、生活の野党5党が、参院選で選挙協力を打ち出し、共産党は候補者を下ろし始めました。

山口 野党各党の主要政策――消費税、外交・安保、憲法改正、TPPなどの主張には大きな隔たりがあります。さしずめ5野党を結び付けるのは「平和安全法制廃止」という一本のボルトだけ。これこそ野合の極みというものです。

――3月2日、民主党は宮城県で共産党と初の政策協定を結び、今夏の参院選に向けて候補者を一本化しました。

山口 共産党は当初、安全保障関連法制の廃止を掲げる「国民連合政府」構想を呼びかけ、それが受け入れられないと見るや同構想を横に置き、自前の候補より「野党統一候補」を立てる方針に転換しました。そもそも1人区で共産党が当選することはありませんから、候補を取り下げても痛くも痒くもない。共産党の目論見は「野党共闘」をリードすることで安全保障関連法制に反対する層に自らの存在感をアピールし、党勢拡大を図ることです。参院選比例代表で「850万票、得票率15%」をぶち上げています。

ブレない岡田代表らしくない

――民主党の岡田代表は「野合で何が悪い」と開き直っています。

山口 堅物でブレない岡田さんらしくないですね(笑)。もちろん岡田代表は初めから「共産党とはうまくいかない」と、よくわかっているはずですよ。共産党の綱領には「資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる」という、現行憲法を破棄しなければ実現できない大方針が明記されています。彼らの外交・安保政策の立脚点は「日米安保条約廃棄」「自衛隊違憲・将来解消」であり、今日の我が国の安保政策と正反対の立場です。とりわけ北朝鮮に対する共産党の認識は世の中とかけ離れています。昨年11月、志位委員長は「北朝鮮にリアルな危険があるのではない」と発言し、そのわずか2カ月後に北朝鮮が初の水爆実験に成功したと発表し、失笑を買いました。「野党共闘」では非常に柔軟に見える共産党ですが、彼らの狙いは民主党の支持層を切り崩すことです。

――甘利大臣が辞任した後も、閣僚のお粗末な発言が続いています。

山口 内閣支持率があまり下がらないのは「ダメな野党を押し返せ」という、有権者のエールだなどと驕ってはなりません。参院選は政権選択の衆院選と異なり、政権与党に対する中間評価的な性格を持つため、苦しい戦いになりがちです。その怖さを一番ご存知なのは総理ご自身です。第1次安倍政権下で行われた07年夏の参院選は、直前に年金問題や閣僚不祥事が続出し、あれよあれよという間に支持率が急落し、惨敗を喫しました。

――共産党が自前の候補を下ろし、全ての1人区(32選挙区)に野党統一候補を立てる動きが加速しています。

山口 衣の下に鎧を隠す共産党がリードする野党統一候補は理念も政策もそっちのけ、選挙目当ての「究極の野合」ですが、油断したら足元を掬われます。これまで有権者は参院選で政権与党の傲慢をキツく戒めてきました。参院選の「お灸の一票」恐るべしなのです。

――夏の参院選で公明党は比例区で6議席以上、選挙区で前回の4議席から7議席への躍進を目指していますね。

山口 選挙区で新人が出馬する愛知(4人区)が9年ぶり、兵庫と福岡(共に3人区)は24年ぶりの挑戦、神奈川(4人区)も新人です。それぞれ福祉・労働政策に通じた厚労省キャリアや弁護士、外交官、ジェットエンジンの開発に携わった防衛大准教授とバラエティに富み、平均年齢42歳の次世代のホープを擁立しました。四半世紀ぶりの兵庫と福岡での出馬は、地元の議員・党員にとっても初陣に等しく、非常に厳しい戦いです。

衆参ダブル選挙はお得でない!

――公明党は参院選で何を訴えますか。

山口 デフレ脱却を目指した我々の取り組みが奏功し、企業の収益が上がり国税で15兆円、地方税を合わせると21兆円の税収増を達成しました。今後も経済再生を確実に進め、賃金引き上げの流れを大企業から中小企業へと広げていきます。地域に根ざした我が党の持ち味を活かし、きめ細かな社会ニーズをしっかりとつかみ、連立与党内でチェック・アンド・バランスを果たしていきます。我々が連立政権にいることで政治が安定し、より幅広い合意を作ることができるのです。

――衆参ダブル選挙の可能性は?

山口 解散権を持っているのは総理お一人ですから、諸々の情勢を睨んで、勝負どころをご判断されるまで――。私どもがとやかく言う事ではありません。

とはいえ、日本国憲法は衆院と参院で任期の異なる議員の選出を定めており、憲法が衆参同日選を望んでいるとは思えません。さらに政党名の投票に限られる衆院比例と、候補者名でも政党名でも投票できる参院比例を同時に行うのは紛らわしく、有権者にとって親切とは言えませんね。衆参同日選で一挙に大きな勢力を握る誘惑に駆られる気持ちもわかりますが、そこには大きなリスクが潜んでおり、決してお得でない。閣僚の不穏当な発言が相次ぐ中で大勝負に出たら、衆院選も「お灸の一票」になりかねない。

――安倍総理に苦言を呈しますか。

山口 苦言なんか申しませんが、要所要所で確かなサインを送っています。自民党と連立を組んで13年、我々には知恵とノウハウ、阿吽の呼吸があります。

   

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