編集後記

2015年9月号 連載
by 宮

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臨時会見を行う白井功原子力・立地本部長代理(8月8日東電本店、撮影/本誌 宮嶋巌)

大型休憩所の展望窓からイチエフの北を望む

8月8日(土)の正午過ぎ、携帯メールが響く。早朝6時半にイチエフで死亡事故発生。東電本店の臨時記者会見に駆けつける。亡くなったのはいわき市に住む作業員、鳥山直志さん、52歳。1F北の土捨場(どすてば)でバキューム車のタンク内を清掃中に、直径1.8m、重さ0.5tのフタに頭部を挟まれ、即死だった。タンクのフタを閉じるレバーを操作した同僚は、警察の取り調べに「鳥山さんの合図で閉じた」と話しているという。2人が工事車両業務でペアを組んで半年が経つ。当日の作業環境は防護服、全面マスク、ヘルメット、手袋3重(綿手、ゴム手2重)の重装備。全面マスクを被ると視野が狭くなり、声がくぐもり、耳も遠くなる。

福島原発での死亡災害は「掘削作業中の生き埋め」「タンク天板からの墜落」「加熱缶点検中の頭部挟まれ」に次ぐ4件目。14年度の労働災害が、13年度の倍の64件に急増したため、東電は4月に「安全性向上対策」を発表したが、どこか他人事だった。

事故の2日後、東電広報は「被災者はタンク内の清掃ではなく、車両後方に貼ってあったステッカーを剝がそうとしていた」と、肝心の作業状況を訂正した。

鳥山さんは元請ゼネコン鹿島の孫請企業(2次下請)に所属する作業員。東電には死亡事故を起こしても「請負企業の労働者に直接指揮命令できない」という逃げ場がある。記者会見でも「元請から聞いたところによれば」という言い訳を繰り返し、ラチのあかない「伝言ゲーム」だった。

東電の当事者意識の乏しさは、現場の最前線の作業員が下請、孫請どころか、その下に入る3次、4次、5次業者に雇用されるという「多重下請構造」にあぐらをかき、安全管理が行き届かずとも、「それは下請に任せている」と雇用者責任を回避する体質に染まっているからだ。原発労働慣行の宿(しゆく)痾(あ)である。

   

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