2015年9月号 BUSINESS
ヤフーは7月30日、「ヤフーニュース」に記事を配信している情報提供元のメディア企業に対し、業界内で問題視されているステマ(ステルスマーケティング)行為を、積極的に排除・撲滅していくことを明らかにした。
ヤフーが強硬な姿勢を示した背景には、メディア企業が広告主から広告費を受け取っているにも関わらず、あたかも中立的に取材・編集したように装い、ステマ記事を配信してくる行為が後を絶たないことがある。「広告」「PR」といったクレジットを表記せず、宣伝であることを隠す記事が増えれば、ヤフーとしても信用を毀損することになる。
編集記事と広告記事の違いを読者に明示することは、ネットでは長らく曖昧にされたままだった。ようやく今年3月に、業界団体の日本インタラクティブ広告協会が「ネイティブ広告に関するガイドライン」を策定し、業界全体として消費者保護に取り組むよう促したが、今回のヤフーの動きもその流れに沿ったものと言える。
最初の見せしめとなったのは、ネットネイティブが配信する「モデルプレス」、マイナビが配信する「マイナビニュース」「マイナビウーマン」の3媒体だ。ヤフー関係者によると「ステマ記事の配信を含め、誠意ある協力関係を保っていけないと判断し、契約を解除した」という。
この事態に一番慄いているのは、ステマを常態化させてきた広告代理店とPR会社だろう。モラルの低い一部の広告代理店やPR会社にとって、ステマ記事は手っ取り早く儲かる収入源の一つだからだ。こうした企業は広告主に対し「うちを通せばヤフーニュースで記事になります」と不正な営業を行い、情報配信元に対しては「対価を支払うので記事広告をヤフーに配信してくれないか」と囁くのだ。
中にはフライング・ブレインなる企業のように、ヤフー等のロゴを勝手に載せて「記事掲載保証」を謳うところもあるが、当然無許可である。オンラインで思うように売り上げが上がらないメディアにとっては、甘い誘惑だろうが、ステマは景品表示法違反に当たる可能性もある。
業界に横行している不正はステマだけではない。不動産や教育教材などの資料請求を請け負う広告代理店の中には、請求数を水増しするケースも少なくないという。ある広告代理店の経営者は「広告主とは請求件数×何円といった成果報酬で契約するので、数が集まらないと架空の請求を“まぶす”のはよくある手口」と悪びれない。
業界のモラルの低さを示す話には枚挙に暇がない。昨年には、ジャスダック上場のデジタルガレージに国税庁の調査が入り、当時執行役員だったNが脱税で摘発される事件も起こっている。Nは同社の広告責任者を務めていたのだが、売り上げの一部を自らが関与する会社を経由して“ピンハネ”しており、その金額が億単位を超えていたことが発覚したのだ。
関係者によると、Nは同じようにピンハネを行っている別の広告代理店の幹部らと、六本木や西麻布で頻繁に豪遊していたという。国税の調査はNの複数の関係者にも及んでいるが、懲りないNは別会社を作り、デジタルガレージ時代の取引先と頻繁に接触しているようだ。上場企業の元役員からしてこれだから、業界のモラルなど推して知るべしかもしれない。