官邸主導で農水事務次官に奥原正明経営局長を抜擢か

2015年5月号 POLITICS [インサイド]

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60年ぶりの農協大改革プランをまとめ上げた農水省――。次の注目点はコメや牛豚肉が輸入関税撤廃の「開国圧力」に晒されている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉、そして今夏に予定される農水省の幹部人事から目が離せない。

就任から2年半が経つ皆川芳嗣事務次官(78年入省)が勇退するのは既定路線。後を継ぐ本命は本川一善水産庁長官(79年入省)と目されている。本省局長から国会・永田町対策を取り仕切る官房長、水産庁か林野庁の長官を経て次官の座に就くのが農水省の出世街道。生産局長、官房長を経て水産庁長官に就任した本川氏はこのルートを一歩も外さずに歩んできた。口うるさい自民農林族議員や農水省OBも、12年9月に皆川次官が誕生した時から「次は本川君で決まり」と口を揃えていた。

ところが、このところ一部で本川長官と同じ東大法卒で同期入省の奥原正明経営局長を推す向きがあり、「レースは混沌としてきた」と、首相官邸にパイプを持つ官僚OBは言う。

奥原局長は実務能力に定評がある一方、お気に入りの部下ばかり重用するアクの強い仕事ぶりから、省内の敵が多く、次官レースからは早々に外れ、今夏には退任との見方が専らだった。その奥原氏が「農協改革担当局長」として、農協グループや守旧派農林族議員の抵抗をねじ伏せてJA全中解体の殊勲を挙げた。

農協叩きを「岩盤規制改革」の突破口と位置づけ、得点稼ぎを狙った首相官邸の覚えはめでたく、その論功行賞で昇格との見方が広がった。各省次官の人事を握る内閣人事局(昨年発足)の初代局長は、加藤勝信内閣官房副長官であり、官邸主導の「逆転人事」は十分あり得る。

ところが、農水省首脳部と有力OBには、仕事師だが人望のない奥原氏を次官に抜擢する発想は微塵もない。「初代局長の加藤副長官は、大仕事をやってのけた奥原君を評価しており、政治主導の霞が関人事をアピールするためにも抜擢するのではないか」と、先のOBは言う。

   

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