自公連立政権に推進力 数に驕らぬ「中道政治」

山口 那津男 氏
公明党代表

2015年2月号 POLITICS [インタビュー]
聞き手/本誌編集人 宮嶋巌

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山口 那津男

山口 那津男(やまぐち なつお)

公明党代表

1952年茨城県出身。東大法卒。弁護士を経て90年衆院初当選。2期6年半務め、細川内閣で防衛政務次官。01年東京選挙区より参院初当選(現在3期)。党参院国対委員長、政調会長を経て09年代表(現在4選)。座右の銘は母校水戸一高の校是でもある「至誠一貫」。

写真/平尾秀明

――総選挙で底力を見せつけました。

山口 9小選挙区で完勝し、比例区は4増の26人が当選、合計35議席の獲得は、現行の小選挙区比例代表並立制のもとで過去最多となりました。戦後最低の投票率にもかかわらず、比例区総得票数は前回の7​1​1万票を20万票も上回る7​3​1万票となり、得票率も前回の11.8%から13.7%に拡大しました。

――勝因をどう分析しますか?

山口 私たちは「経済の好循環」を確かなものにし、景気回復の実感を地方や中小企業、家計にまで広げていくこと、消費税を10%に引き上げる時には家計を助ける軽減税率を導入することを強く訴えてきました。生活者の視点で政策立案をしていく我が党の持ち味を連立与党の中で、さらに発揮してほしいという期待の表れだと思います。また昨年11月に結党50年を迎えた我が党にとって、決して負けられない戦いでもありました。

自公合意に「決して驕ることなく」

――自民党は議席を減らしました。

山口 少し減らしたけれども、衆院定数が5減になったことから、自民党の議席占有率は若干上がっています。有権者が、自公連立政権に「さらなる期待」を示し、「推進力」を与えてくださったことは明らかです。一方、前回の衆院選で話題をさらった「第三極」はわずか2年で後退し、代表が落選した民主党にも厳しい審判が下りました。責任ある政策を提示できないバラバラな野党に国政を委ねるわけにはいかないということです。

――一方で共産党が躍進しました。

山口 安倍政権と真っ向から対決する姿勢が、他の野党よりわかりやすかったからでしょう。次の戦いは4月の統一地方選ですが、その勢いは決して侮れません。総選挙の翌日、私は安倍首相と会談し、8項目にわたる連立政権合意文書を交わしました。その冒頭で絶対安定多数を得た衆院選の結果について「決して驕(おご)ることなく」という文言を、あえて書き加えました。戦後最低の投票率だったことを考えると、それは積極的な信任とは言えず、連立政権は数に驕ってはならない、謙虚で丁寧な政権運営に努めなければならないという自戒の念です。

――公明党は、これまで12年間にわたり自民党と連立を組んできました。

山口 東西冷戦が終わり、96年に選挙制度が大きく変わる中で、日本は新たな連立政権の時代を迎えました。今日の自公連立の基は99年に発足した自自公連立であり、それ以降、自公は連立与党を組み、幾多の課題を乗り越え、我が国の連立政権時代の礎を築いてきました。実際、93年の細川政権誕生以来、自民党は今日に至るまで単独政権を樹立することができません。言葉を換えれば、もはや我が国では、一つの政党が衆参両院で過半数を握るパワーがなくなりました。それは幅広い民意を受け止める力を持つ単独政党がなくなったことを意味します。

――連立参加のメリットは?

山口 公明党は地方議会からスタートし、地方議会に軸足を置きながら、大衆の望みや希望をストレートに担い、数々の実績を上げてきました。ところが、国政では野党時代が長く、自らの主張を自らの手で実現することができませんでした。今や連立与党として、国民ニーズを的確に把握し、それを国政に結び付け、政策実現していく責務を負っています。さらに公明党は与党の一翼として、我々しか為し得ない「新しい中道」の役割があると考えています。自民党と力を合わせて改革を断行する時もあれば、与党内で野党的な役割を発揮することもあります。左右のイデオロギーに偏(かたよ)らず、中道を歩む公明党だからこそ、政治的な対立を乗り越え、現実的な「調和」を作り出すことができるのです。

自公幹事長が揃って北京訪問も

――「新しい中道」の役割とは?

山口 東西陣営と左右の対立が見えにくくなった時代において、私が考える中道政治とは「あるべき価値」を見据え、一方に偏ったり、切り捨てたりせずに合意を形成していくこと。これが、ポスト冷戦時代における「新しい中道」です。

――山口さんが仰る中道政治における「あるべき価値」とは?

山口 我が党はこの半世紀、創立者である創価学会の池田大作名誉会長の「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」との立党精神の下、中道の旗を掲げて庶民の側に立ち、平和、福祉、環境、教育など様々な課題に取り組み、多くの実績を重ねてきました。その50年の歴史の中で追求してきた中道の役割とは、多様な価値観や利害の対立がある中で「『生命・生活・生存』を最大に尊重する人間主義」の座標軸から、調和を見出し合意を形成していくことです。いかなる政策に取り組む時にも、この「人間主義」の軸はブレない。まさに「あるべき価値」の合意形成を主導することが、「新しい中道」の理念なのです。

――集団的自衛権を巡る与党内協議では右傾化にブレーキをかけました。

山口 「平和の党の看板を降ろした」と叩かれましたが、あの解釈変更の閣議決定を受け、「公明党によって集団的自衛権の行使は抑え込まれた」と論ずる識者が少なくありません。

「よくブレーキをかけろ!」と仰る人がいるけれど、ブレーキをかけること自体が目的ではなく、国民が納得し安心する、調和のとれた合意を形成するバランサーとして、公明党への期待は大きいと思います。時に与党内で意見が激しくぶつかることもありますが、我々には多様な民意を幅広く結集し、合意を形成する経験と知恵があります。

――山口さんは習近平主席と4回も会談しています。公明党が半世紀にわたって培った対中パイプが生きませんか。

山口 習主席から年賀状を頂戴しました。日中の政府間で対立が生じた時、継続的な政党間の対話による交流が大切だと仰る中国の要人もいます。今、中国側に自公の幹事長や政調会長の同時訪中を打診しています。もし、谷垣、井上両幹事長が揃って北京を訪問したら、政府間のムードも変わると思います。

   

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