編集後記

2014年10月号 連載
by 宮

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生産性倍増委員会の初会合で挨拶する宇田左近氏。左は東電の數土文夫会長(9月4日、撮影/本誌・宮嶋巖)

9月4日東電本店。「生産性倍増委員会」の初会合を開いた數土(すど)文夫会長は鼻息が荒かった。「私は単なる『コスト削減!』を命じたことは一度もない。品質の維持向上、安全の追求、設備機器の長寿化といった、地道な努力を徹底させれば、自ずと生産性が上がり、高コスト体質から抜け出せる」

人材流出が止まらず、気息奄々の東電に生産性倍増とはいかにも酷だ。業を煮やした会長の「荒療治」と思いきや、さにあらず。「生産性倍増を旗印に、とことん合理化にチャレンジしてみたい」と申し出たのは、東電の執行役たちだった。「倍増はいくらなんでも」と、取締役会で議論になったが、「我々は萎縮せず前に出る。大胆不敵なネーミング、大いに結構」(數土さん)と、ゴーサインを出した。

「あえて生産性倍増の定義は設けないが、ヒントは現場にある。在庫を半減させ、残業が半分になれば大成功。110日かかった火力発電所の定期検査は、今は80日で済む。もうひと頑張りで60日になる」(數土さん)

新・総合特別事業計画(再建計画)では、東電は10年間に4兆8千億円のコスト削減を目論むが、これにどれだけ上乗せできるか、生産性倍増委は12月に「究極の合理化策」をまとめて公表する。そのカギを握るのは、2年にわたり東電の資材購入や工事発注を案件ごとに調べ上げ、高コストの取引慣行にメスを入れてきた「調達委員会」の3人の外部専門家だ。宇田左近委員長(米マッキンゼー出身、元日本郵政専務執行役)ら3人が揃って、生産性倍増委に加わった。彼らは随意契約だらけの東電を競争入札中心に改革し、人、モノ、金の効率性を高めるため火力・原子力・配電・工務の現場に出向き、サプライチェーンごとに精査、持続的な生産性向上を図ってきた。そのノウハウと蓄積が、大胆不敵な合理化をリードしそうだ。

   

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