厚労省がカネ食い虫のデイサービス潰し

2014年4月号 LIFE

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デイサービス(通所介護)は介護保険制度の重要なサービスの一つ。高齢者の自立支援や家族の負担軽減を図るため、自宅で介護を必要とする高齢者を事業所まで送迎し、日中に入浴や食事、体操、レクリエーションなどを提供するものだ。

ところが、デイサービスの総費用が増加し続けていることに危機感を抱いた厚生労働省が、小規模な事業所の指定・監督権限を身近な市町村に移すことで、デイサービスの「適正化」を図ろうとし始めた。

全国でデイサービスの月間利用者は約160万人、事業所は約3万5千カ所に及ぶ。民間事業者の参入が著しく、中でも小規模な事業所の増加が目立つ。創意工夫で伸びる民間事業者もあり、たとえばフランチャイズで全国展開している企業グループは民家を改修した小規模な事業所(月当たり利用者が300人以内)でデイサービスを朝から夕方まで提供。夜間は一泊1千円前後でそのまま宿泊できるようにする「お泊まりデイサービス」を介護保険外の自主サービスとして実施している。

一方、2012年度のデイサービスの総費用は約1.4兆円。00年の介護保険制度創設当初の約4倍にふくれあがっている。この急激な増加を厚労省は「デイサービスの過剰な供給が需要を生んでいる」(幹部)と問題視。図の通り、デイサービスのうち小規模型を、市町村が事業所を指定・監督する「地域密着型サービス」に移行させようとしている。

厚労省は「地域との連携や運営の透明性確保が目的」と説明するが、実際には「介護保険財政を運営する市町村に責任を転嫁することで、小規模型デイサービスの給付を抑制する目論見」(自治体担当者)とみられる。昨年末から全国紙などで「安全基準は事業者任せ」といった「お泊まりデイ」バッシング記事が相次いだが、これもデイサービス潰しの世論喚起だったのか。

デイサービスが提供するのは、自宅や食堂、銭湯、老人クラブなどでも行われる日常生活そのもの。国・自治体の厳しい財政状況を考えると、その守備範囲は確かに再考の余地がある。しかし、高齢者が住み慣れた地域で過ごす上で、デイサービスは大きな役割を担ってきた。厚労省がこれに代わる受け皿として描く地域サロンなど自助・互助の仕組みは、まだ普及しているとは言いがたい。今回の見直しで一部の業者が淘汰されれば、そこで担っていたサービスは一気に家族にのしかかる。

そもそも民間主導で小規模な事業所が増加している状態は、制度創設当初に掲げた「民間事業者の活用」が実現した一例。デイサービス潰しは厚労省が進める在宅重視の方針とも全く整合しない上、役所の裁量行政で民間の創意工夫を挫くことになりかねない。経営者からは「利潤を確保したら給付抑制の対象になるなんて、我々は鵜飼いの鵜か」と嘆息が漏れている。

   

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