2014年2月号
連載
by 宮
東電社員を乗せた復興支援バスは、ほぼ毎夕、東京から3時間半かけて、Jヴィレッジにやって来る。福島復興本社がこの地に生まれたのは、ちょうど1年前。以来、1日100人以上の社員ボランティアが、本店や各事業所から浜通りに派遣され、その数は延べ5万人にのぼる。彼らはJヴィレッジに合宿し、翌朝から揃いの作業着で現地に赴き、避難住民の一時帰宅のお手伝い(延べ1万9千人)、屋内や道路の清掃・片付け(延べ9千人)、墓地や町道の除草・清掃(延べ7千人)などに汗を流してきた。
〈お盆の数日前に避難されたお宅の清掃に伺いました。現場リーダーから「こちらは厳しいので、何を言われても、皆さんは答えないでください」と注意されました……奥様の第一声は「その青い服を見ると吐き気がする」でした。2日間、熱中症と戦いながら精一杯やりました。お別れに、奥様は「こんなにしてくれるとは思わなかった。この姿を、なぜテレビは流さないのか」と、冷たいジュースを出してくださいました〉。
〈私は震災直後の4月に入社しました。最初の年は節電の契約変更、2年目は料金値上げの現場対応に追われました。ふと気づくと、私は福島から目をそらしていました。「あの時、私は会社の人間じゃなかった。私は悪くない。悪いのは国だ。私だって未来をグチャグチャにされた被害者だ」と。でも、ここにやって来て、長引けば長引くほどもう元に戻らない被災地の現実を知りました。全社員に現地を見て、感じて、同じ言葉を口にして欲しい。「福島復興なくして東電新生はない」〉
Jヴィレッジの宿泊帳(ペンションノート)には、復興ボランティアに参加した1万人もの社員の率直な思いが綴られている。その全てに目を通した復興本社の石崎代表はしみじみと――。「これほど勇気づけられたことはありません」。